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長田弘の名言
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1.
まっすぐに生きるべきだと、思っていた。
間違っていた。ひとは曲がった木のように生きる。
きみは、そのことに気づいていたか？
2.
人は死ぬが、
よく生きた人のことばは、死なない。
3.
今日、あなたは空を見上げましたか。
空は遠かったですか、近かったですか。
雲はどんなかたちをしていましたか。
風はどんな匂いがしましたか。
4.
人の感受性をつくるのは、
人のそだった日々の風景だ。
5.
一番大切なことはすぐ足元にある、
あるいはすぐ目の前にある。
6.
よい一日を──
かんがえてみれば、
ひとがひとにいえる挨拶として、
それ以上の言葉はない。
7.
じぶんの人生は
じぶんできちんとつかわねばならない。
8.
誰も殊更に見ようとしない最もありふれたもの、それが実は最もなくてはならないものだということ。
9.
無駄を怖れたら、たのしみはない。
無駄を怖れない一個のこころのあるところにしか、いま、ここが確かに感じられるような一人のじぶんの自由な時間なんて、ほんとうはないのだ。
10.
わたしたちは日本という国に生まれたと思っていますが、そうではなく、日本語という言語のなかに生まれたのです。
11.
人間はだれでも、言葉を知らずに、この世に生まれてきます。
成長するとは、自分にとって必要な言葉が、自分の中に育つということです。
12.
悲しいかな、世界は不正を受けいれている。
13.
生きるとは、年をとるということだ。
死んだら、年をとらないのだ。
14.
夕陽はマジシャンだ。
黙って、眺めているだけで、いつしか気もちの奥まで、あかあかと明るくされてゆく。
やがて、ありふれた一日が、すばらしい一日に変わる。
ありふれた出来事が、すばらしい記憶に変わるのだ。
15.
先刻までいた。今はいない。
ひとの一生はただそれだけだと思う。
ここにいた。もうここにはいない。
死とはもうここにいないということである。
16.
人生は長いと、ずっと思っていた。
間違っていた。
おどろくほど短かった。
きみは、そのことに気づいていたか？
17.
死の知らせを聞くと、
どうしてか近しく、懐かしく思われる。
そうなのだ。
もっとも遠い距離こそが、
人と人とをもっとも近づけるのだ。
18.
空を見あげると、気持ちが開けてゆく。
19.
この世界は、
ことばでできている。
そのことばは、
憂愁でできている。
20.
子どもにとっても、大人にとっても原点なんですよね、子どもの本が。
21.
得たものでなく、
失ったものの総量が、
人の人生とよばれるものの
たぶん全部なのではないだろうか。
22.
ハイドンは一番難しい生き方を貫いた。
すなわち、しごく平凡な人生を
誇りをもって、鮮やかにきれいに生きた。
23.
この世でいちばん難しいのは、いちばん簡単なこと。
24.
貧しかったから、貧しさに学んだ。
25.
人生は、何で測るのか。
本で測る。一冊の本で測る。
おなじ本を、読み返すことで測る。
26.
本の文化を成り立たせてきたのは、
じつは、この忘れるちからです。
忘れられない本というものはありません。
読んだら忘れてしまえるというのが、
本のもっているもっとも優れたちからです。
読んでも忘れる。
忘れるがゆえにもう一回読むことができる。
27.
人生という本を、人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
28.
聴く、という一つの動詞が、
もしかしたら、人の
人生のすべてなのではないのだろうか？
29.
自分の先入観、自分の意思をもって、物事を見ないこと。
30.
チェロが一番響くのは、弦の切れる直前。

31.
私が語るのではない。私をとおして
この世界が語るのだ。
32.
森には、何一つ、
余分なものがない。
何一つ、むだなものがない。

人生も、おなじだ。
何一つ、余分なものがない。
むだなものがない。
33.
「考えよ。
　語れ。
　行え。」
３つの動詞を、じぶんがどれだけ新しく、ゆたかに生きられるかどうか。
34.
ごらん。青空のほかに、神はない。
35.
（短歌や漢詩だけでなく）日本の歌もそうですが、山と川で表現しているのは、変わらないものがそこにある、ということなんだ。
36.
世界の真ん中で、
或る日、誰かが叫んだのである。
「孤独な者だけが悪い！」
すると、誰もが、
孤独であることを、
致命傷のように感じたのだ。
以来、わたしたちは、
生き方を誤ってきたのである。
37.
感情は信じられないが
感覚は裏切らないとおもう
38.
被災地の人にとって、一番支えになっているものは季節なんですね。
３月１１日に大震災が起き、その後、春が来たということが多くの人にとって非常に支え、なぐさめ、励ましになった、と何度か聞きました。
39.
歩き方一つにすら、生きられた思想がある。
服はただの服なのではない。
服を着て、ひとは生きかたの表現を身に着ている。
40.
読書について言えば、答えを求めて読むのではなく、ひたすら読む。
じっくり読む。
耳を澄ますように、心を澄まして、言葉を読んでゆくほかに、読書のコミュニケーションはない。

41.
素晴らしいものは、誰のものでもないものだ。
「風と砂塵のほかは、何も残らない」
砂漠の歴史の書には、そう記されている。
42.
人はそれぞれの場所にいて、
それぞれに、世に知られない
一人の冒険家のように生きなければならない。
43.
いい音楽を聴いてたのしいときは、健康である。
44.
人生はじぶんが愛する人たちといがみ合って暮らすには、あまりにも短すぎる。
45.
ひとが人生をつまらなくしてしまうのは、
たのしみが足りないからではない。
「生は暫(しば)しの訪れ」であるという覚悟が足りないのだ。
46.
不幸は数えない。
死んだ人間に必要なのは、よい思い出だけだ。
47.
ゆたかさは、私有とちがう。
むしろ、けっして私有できないものだ。

私有できないゆたかなものを
われわれは、どれだけもっているか？
48.
一ぴきのねこと
友だちになれたら
ちがってくる　何かが
もっと優しくなれるかもしれない
49.
一人の日々を深くするものがあるなら、
それは、どれだけ少ない言葉でやってゆけるかで、
どれだけ多くの言葉でではない。
50.
「なぜだろう」という純粋な疑問を、目の前の世界に投げかける。
すると、「あたりまえ」の世界が、くるりと一回転する。
そのあと、じぶんに返ってくる言葉が、詩とよばれる言葉です。

51.
一期一会は食卓にあり。
人生とは──
誰と食卓を共にするかということだ。
52.
何をなすべきかを語る言葉は、果敢な言葉。
しばしば戦端をひらいてきた言葉です。
何をなすべきでないかを語る言葉は、留保の言葉。
戦争の終わりにつねにのこされてきた言葉です。
53.
本は読んでも忘れることができる、
忘れたらもう一回読めばいいという文化なのです。
54.
読んで忘れた本に再読のチャンスを自分で与えることで、
読書という経験を、自分のなかで、
絶えず新しい経験にしてゆくことができる。
55.
時に自分との闘いだったり、
自分で自分を励ますことだったり、
本の言葉の向こうに、
つねにもう一人の自分を見いだしていくのが読書。
56.
それぞれの生き方をつくりだすものはそれぞれの身に付いた習慣であり、習慣とよばれるそれぞれの日々の在り方であり、それぞれの自分の人生の時間の使い方である。
57.
物語には終わりなんてない。
いつもはじまりがあるだけだ。
58.
生けるものがこの世に遺せる
最後のものは、いまわの際まで生き切るという
そのプライドなのではないか。
59.
束の間に人生は過ぎ去るが、ことばはとどまる、
ひとの心のいちばん奥の本棚に。
60.
希望で全部を語るかのように、「やればできる」と言い切れば、やればできるようになるというのは、やっぱりそうではない。
やってもできないことがあるということが同時にくっついていないと言葉にはならない。
やってもできないかもしれないけれども、やってみようというのが一番わたしたちにとっての重要なところじゃないか。

61.
情報がふえればふえるほど、逆にコミュニケーションはすくなくなってゆく。
あるいは浅く、小さくなってゆく。
62.
猫と暮らしています。
飼っているのでなく、一緒に暮らしています。
63.
国家というのは、あくまでフィクションにすぎません。
64.
誰もが人生を目的と考える。ところが、
世界は誰にも、人生を手段として投げかえす。

彼女は思う。人生は目的でも、手段でもない。

ここから、そこへゆくまでの、途中にすぎない。
65.
いまは名詞がおおすぎる。
そして動詞がすくなすぎる。
66.
ひとは死ぬ。
赤ん坊が生まれる。
ひとの歴史は、それだけだ。
そうやって、この百年が過ぎてゆくのだ。
何事もなかったかのように。
67.
読書について、
「どういう本を読んだらいいのか」という質問は、
じつに不要な質問なのです。
68.
ときには、木々の光りを浴びて、
言葉を深呼吸することが必要だ。
69.
ひとが誤るのは、いつでも言葉を
過信してだ。きれいな言葉は嘘をつく。
この世を醜くするのは、不実な言葉だ。
70.
歩くということは、じぶんがじぶんからぬけだしてきた感じをもって、いろいろなキズナからときはなたれた感じをもって、一人の自由な孤独な人間となって歩くということだ。

71.
毎日、青空の下で、
おもいきり精神を働かすのだ。
72.
言葉にならないということは、言語絶するということではない。
言葉にだしたら嘘になってしまうということです。
73.
読書は正解をもとめることとはちがうと思う。
わたしはこう読んだというよりほかないのが、読書という自由だ。
74.
どこにあるかわからなくても、
あるとちゃんとわかっている魂みたいに、
必要な真実は、けっして
証明できないような真実だ。
75.
今、目の前にある本は、
たまたま目に前にある本というのにすぎないのが
本の世界であり、
それだけに大事なのは、
自分で本と出会うということであり、
自分で本を探すということであり、
そうして自分で読むということです。
76.
よくない質問に答えはないのです。
77.
人はいまも、二千年前と
すこしも変わらない理由で、死ぬ。
78.
言葉を不用意に信じない。
79.
おたがいのことなど、何も知らない。
それがわたしたちのもちうる唯一の真実だ。
80.
おやすみなさい悲しみを知る人

81.
世界は一冊の本である。
どんなに古い真実も、
つねにいちばん新しい真実でありうる。
それが、一冊の本にほかならないこの世界の
ひそめるいちばん慕(した)わしい秘密だ。
82.
詩を書くことは、目の前の日々から思いがけない真髄を抽きだすということ。
83.
どこまでも明確な言葉をもとめて、
言い切れるところまで言い切って、
なお言い切れない何かが一滴のこる。
その透明な一滴が言葉を光らせるのだ。
84.
ありふれた真実がないがしろにされて、何事につけ、価値というものがもっぱら「例外」にもとめられるとすれば、それはひとの心根の貧しさを明かしこそすれ、ひとの気もちをゆたかにすることはない。
85.
たたずまう樹が（人に）思いださせるのは、その原初の記憶なのだ。
人はかつて樹だった。
だが、今日もはや、人は根のない木か、伐られた木か、さもなければ流木のような存在でしかなくなっているのではないだろうか。
86.
石（＝墓石）に最小限の文字を刻みこむように、記憶に最小限のことばを刻むことは、いまでも詩人の仕事の一つたりえているだろうか。
87.
プロパガンダの言葉で、詩の言葉は書けないのです。
詩の言葉は、気のきいた「号令的讃美」の言葉とは、はっきりとちがう。
88.
単純でない真実なんてない。
89.
（人生に必要なのは）なくてはならないものではなかった。
なくていい。そう思い切ることだった。
90.
詩の言葉は、本質的な意味で、言葉を翻訳する言葉です。
言葉を異なる状況に、異なる文脈に、異なる意味に翻訳して、言葉に異なった光をあてて、言葉を光らせる言葉です。

91.
詩を書くことは、いわば手仕事である。
詩集というのは、心の刺繍(ししゅう)のようなものなのかもしれない。
92.
じぶんの一日をひとは生きるのであって、運命を生きるのではない。
永遠さえも、ひとの一日には如(し)かないのだ。
93.
詩の言葉は、一人のわたしの感情のやりばではない。
社会にむきあって、その「しんどさ」に耐えられるだけの言葉を、一人のわたしの言葉として、じぶんのいま、ここに置く。
94.
詩は、いま、ここに、一人の私が耳を澄ます澄ましかた、ものを見る見かた、深く感じる感じかたなのだ。
95.
空の色は記憶にしかとどめることはできないのだ。
96.
新しい真実なんてものはない。
97.
食卓は、ひとが一期一会を共にする場。
98.
子どもの本と付きあうというのは、子どもの本を子どもの本たらしめている本質を感じとるという経験をする。
そういうことだろうと思うのです。
99.
書くとはじぶんに呼びかける声、じぶんを呼びとめる声を書き留めて、言葉にするということである。
100.
幼い日から、
わたしは生きものたちの死によって、
死についておおくをまなんだ。
いま、三匹の老いた猫と一緒に暮らし、
老い方についておおくをまなぶ。

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