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｜101−173｜
101.
いつぽんの冬木に待たれゐると思へ
（ 長谷川櫂 ）
102.
遠い木が見えてくる夕(ゆう)十二月
（ 能村登四郎 ）
103.
一樹のみ黄落(こうらく)できず苦しめり
（ 穴井太 ）
104.
樫の木は斧を使っても、
最初の一撃では倒れない。
（ ドイツのことわざ・格言 ）
105.
僕は彼岸を信じない。
彼岸なんてものは存在しない。
枯れた木は永久に死に、
凍死した鳥は二度とよみがえらない。
（ ヘルマン・ヘッセ ）
106.
木は神聖なものである。
木と話し、木に耳を傾けることを知る者は、真理を知る。
木は教義も処方も説かない。
木は個々のことにとらわれず、生の根本法則を説く。
（ ヘルマン・ヘッセ ）
107.
故郷を持たぬ人は、
土地に根を持たない草木のようだ。
そして願わくは、
心が故郷を失って、
あらぬ方へと、さまよい行くことのないように。
（ フリードリヒ・ヘルダーリン ）
108.
若い娘は幾たびも軽はずみな夢想を変えて行くのです。
春のめぐり来るたびに若木が青葉をつけ変えるように。
（ プーシキン ）
109.
桜に百年の樹少なく、
松に千年の緑多し。
（ 雨森芳洲 ）
110.
鵙(もず)啼くや一番高い木のさきに
（ 正岡子規 ）
111.
春ここに生まるる朝の日を受けて
山河草木みな光あり
（ 佐佐木信綱 ）
112.
すべての木からパイプを彫ることはできない。
（ ドイツのことわざ・格言 ）
113.
顔打つて新樹の風のくだけ散る
（ 中村汀女 ）
114.
晩秋や風樹の中の一ベンチ
（ 大野林火 ）
115.
山というのは、わたしども人間のふところやと思います。
人間でいえば母親のふところやと思います。
（中略）木も人間もみんな自然の分身ですがな。
おたがい等しくつきあうていかなあきませんわ。
（ 西岡常一 ）
116.
人間の偉大さは、自分の惨めさを知っているという点にある。
樹木は自分の惨めさを知らない。
（ ブレーズ・パスカル ）
117.
木々たちが
「冬はまだ庭にいる、
　　まだ雪が降っている」
と言おうとも、
春はいる、
私の心の中に春はいる。
（ イワン・ヴァーゾフ ）
118.
朝の虹ひとり仰げる新樹かな
（ 石田波郷 ）
119.
魚の心は、水の底に住んでみなければわかりませぬ。
鳥の心も樹上の巣に生涯を託してみなければ、わかりませぬ。
（ 太宰治 ）
120.
トレーニングは木と同じ。
葉っぱや幹とか、見えている部分よりも根っこが大きいものだし、
まずその根っこを大事にしないといけない。
（ イチロー ）
121.
亡父の代から住んでいる家
もとは樹木だった柱
錆びた釘ももとは鉱石
どんな人為も自然のうち
（ 谷川俊太郎 ）
122.
祖国への愛、
それは自然なものである。
では、なぜ国境を越えて
他の国々の人々を愛してはいけないのか？
私たち個々の人間は全てひとひらの木の葉に過ぎず、
全人類が樹なのである。
（ パブロ・カザルス ）
123.
自分の土地に流れる水、
己の上に吹きわたる風の気配、
それを自分の存在のアカシとして出発しない限り、
いかなる文化もありはしない。
花がひらくという神秘。
死にゆく樹々の鮮やかな紅葉の死に化粧。
ぼく自身の生命に共振する。
（ 岡本太郎 ）
124.
木や森はね、知性体なんですよ。
みんな妖怪感度が鈍いから気がつかないだけで、ほんとは知恵がある。
だから宇宙から来ているわけですよ。
で、人間を見てる。
人間が目を向けると、ちゃんとわかって、形をつくってくれる。
それを人間が見て、ワアー妖怪などとやってるわけですな。
（ 水木しげる ）
125.
救済というのは、集団の中で発揮される個人的なエゴイズムにすぎない。
だれが、欠けた茶碗を、枯れた一本の木を〈救済〉などできるものか。
（ 寺山修司 ）
126.
水の光り。
日の光り。
やわらかな風。
葉のしたたり。
おおきな木。
花の色。
草の色。
土の色。
鳥の影。
雲の影。
ふだんはいそがしさのなかに忘れてしまっている「何か」が、
それらのあいだにあるとおもう。
いつもは忘れている「何か」、
それが何か思いだせない「何か」、
何かとしかいえない「何か」を思いだしたいとき、
そこにいったら思いだせるような気がする。
そうした心がふっと開かれてゆくような、
開かれた場所が好きだ。
（ 長田弘 ）
127.
木は天にまで達しないように配慮されている。
（ ドイツのことわざ・格言 ）
128.
恋は野バラの木、
友情は柊(ひいらぎ)の木。
野バラの花咲く時は、
柊の花は色を失う。
けれども、どちらが四六時中咲いているだろうか。
（ エミリー・ブロンテ ）
129.
高邁(こうまい)な思想は樅(もみ)の木と同じで、
日陰にも絶壁の縁にも伸び育つ。
（ フローベール ）
130.
沈黙という木には、
平和という実がなる。
（ アラブのことわざ・格言 ）

131.
樹は、話すことができた。話せるのは
沈黙のことばだ。そのことばは、
太い幹と、春秋でできていて、
無数の小枝と、星霜（＝長い年月）でできていた。
（ 長田弘 ）
132.
枯れ木も山のにぎわい
（ 日本のことわざ・格言 ）
133.
樫(かし)の木の下で、あるいは欅(けやき)の木の下で、立ちどまったことがありますか。
街路樹の木の名を知っていますか。
樹木を友人だと考えたことがありますか。
（ 長田弘 ）
134.
立ちどまる。
足をとめると、
聴こえてくる声がある。
空の色のような声がある。

木のことば、水のことば、
雲のことばが聴こえますか？
石のことば、雨のことば、
草のことばを話せますか？
（ 長田弘 ）
135.
老いて感じること
それは
黙って枯れてゆく
草や木の偉大さである
（ 浅田正作 ）
136.
ほんとうに意味あるものは、
ありふれた、何でもないものだと。
魂のかたちをした雲。
樹々の、枝々の、先端のかがやき。
すべて小さなものは偉大だと。
（ 長田弘 ）
137.
人も草木も虫も
同じものは一つもない
おなじでなくてみな光る
（ 榎本栄一 ）
138.
人間の幸せというものは、しみじみと、心の底から、ああ、いま、自分は生きているということを感じることだな。
そうすれば、自分のまわりのものが、草でも、木でも、風でも、陽の光でも、みんな違ったものに見えて来る。
（ 井上靖 ）
139.
内面の感覚、あるいはそう呼びたければ《神秘的な感覚》といったものが、見えないものの姿を私に見せてくれる。
私の神秘の世界は好ましいものである。
そこには私が一度も《見た》ことのない木や雲や星や渦巻く川がある。
私は、目の見える道連れたちにとっては何一つない時に、美しい花や鳥や笑い声を立てる子供たちを意識することがよくあるのだ。
（ ヘレン・ケラー ）
140.
木や雲が人間に偶然を通して通信しているのを、人間は傍受しようとしない。
そういう存在にも気がつかないわけですよ。
はるか向こうの宇宙の言葉を聞こうと大きなアンテナを建てたりするけども、身近にある木とか、草とか、雲、石なんかからの通信は受けないんですね。
（ 水木しげる ）

141.
草の実が語る。樫の木の幹が語る。
曲がってゆく小道が語る。
真昼の影が語る。ジョウビタキが語る。
独りでいることができなくてはいけない。
（ 長田弘 ）
142.
深山木(みやまぎ)に雲ゆく蝉の奏(しら)べかな
（ 飯田蛇笏 ）
143.
おき上る草木の影や夏の月
（ 五升庵蝶夢 ）
144.
嫁がぬひとに虚無の弁あり秋樹帯
（ 秋元不死男 ）
145.
病葉(わくらば)を振り落しつゝ椎(しい)大樹
（ 高浜虚子 ）
146.
木の実置くてのひら母の日なりけり
（ 秋元不死男 ）
147.
啄木鳥(きつつき)や木に嘴(はし)あてて何もせず
（ 能村登四郎 ）
148.
挿木(さしき)する明日へのこころ淡くして
（ 能村登四郎 ）
149.
寒林の一樹といへど重ならず
（ 大野林火 ）
150.
一としきり落葉して木はまた日を浴ぶ
（ 大野林火 ）

151.
銀杏(いちょう)聳(そび)ゆおのが落葉を見下(おろ)して
（ 大野林火 ）
152.
根を張りてやすらぎゐるや大冬木
（ 大野林火 ）
153.
しづかにも年輪加ふ冬木かな
（ 大野林火 ）
154.
落葉降る天に木立はなけれども
（ 辻貨物船［辻征夫］ ）
155.
老木のふっと木の葉を離しけり
（ 大串章 ）
156.
冬空に大樹の梢(こずえ)朽ちてなし
（ 高浜虚子 ）
157.
木々の間(ま)を透(す)きてしうねく西日かな
（ 高浜虚子 ）
158.
まつすぐに鳥のくる木や風ひかる
（ 岩田ふみ子 ）
159.
生淡々　死又淡々　冬木立(ふゆこだち)
（ 長谷川櫂 ）
160.
いつぽんの冬木となりて人を待つ
（ 金子敦 ）

161.
聞いてやる冬木の洩らすひとり言
（ 後藤比奈夫 ）
162.
さきがけて黄葉(もみじ)してゆく一樹かな
（ 平井照敏 ）
163.
木の中になるほど確かものの芽は
（ 加藤楸邨 ）
164.
大空に伸び傾ける冬木かな
（ 高浜虚子 ）
165.
おき上る草木の影や夏の月
（ 五升庵蝶夢 ）
166.
寝ぶそくの日や輝きて木の芽と鳩
（ 八田木枯 ）
167.
芽ぐむなる大樹の幹に耳を寄せ
（ 高浜虚子 ）
168.
われ佇(た)てば一感嘆符夏木立(なつこだち)
（ 河内静魚 ）
169.
草を見る心は己自身を見る心である。
木を識(し)る心は己自身を識る心である。
（ 北原白秋 ）
170.
人の世の移り変わりは、
木の葉のそれと変りがない。
風が木の葉を地上に散らすかと思えば、
春が来て、蘇った森に新しい葉が芽生えてくる。
そのように人間の世代も、
あるものは生じ、あるものは移ろうてゆく。
（ ホメロス ）

171.
一本の美しく強い木ほど神聖で模範的なものはない。
（ ヘルマン・ヘッセ ）
172.
山や川、木の葉、根や花など、自然界のいっさいの形成物は、私たちの内部に原型を持っており、永遠を本質とするところの魂から発している。
私たちはその魂の本質を知らないが、それはおおむね愛の力や創造者の力として感じられるのである。
（ ヘルマン・ヘッセ ）
173.
おやすみ　赤ちゃん
木の上で　風が吹いたら
揺り篭揺れる
枝が折れたら　揺り篭落ちる
赤ちゃんも　揺り篭も
みんな真っ逆さま
（ 『マザーグース』 ）
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