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1.
この花のために一会(いちえ)の花衣(はなごろも)
（ 後藤比奈夫 ）
2.
悴(かじか)んでをるのは命ある証
（ 後藤比奈夫 ）
3.
止(とま)ることばかり考へ風車
（ 後藤比奈夫 ）
4.
考へてをらない蝌蚪(かと)の頭かな
（ 後藤比奈夫 ）
5.
このさくら人のこころの中へ散る
（ 後藤比奈夫 ）
6.
聞いてやる冬木(ふゆき)の洩らすひとり言
（ 後藤比奈夫 ）
7.
空蝉(うつせみ)をのせてすなほな掌(たなごころ)
（ 後藤比奈夫 ）
8.
花衣(はなごろも)てふは心に着せるもの
（ 後藤比奈夫 ）
9.
寒いからみんなが凜々(りり)しかりにけり
（ 後藤比奈夫 ）
10.
散るさくらみんな散りたくなささうに
（ 後藤比奈夫 ）
11.
瀧の上に空の蒼(あお)さの蒐(あつま)り来(く)
（ 後藤比奈夫 ）
12.
残りゐて早く散りたき花ばかり
（ 後藤比奈夫 ）
13.
平凡がよしと紫苑(しおん)の咲きにけり
（ 後藤比奈夫 ）
14.
こどもの日ですよと娘から電話
（ 後藤比奈夫 ）
15.
花に会ふための言葉を胸に秘め
（ 後藤比奈夫 ）
16.
つくづくと一期(いちご)は夢と花を見る
（ 後藤比奈夫 ）
17.
夕方は滝がやさしと茶屋女
（ 後藤比奈夫 ）
18.
対象となる物の心と物の姿ではどちらが先か、ということになると、客観写生の立場からは、やはり心より姿が先であろう。
物の姿を心をこめて見ていると、物の姿が次第にはっきりし、物の姿の向うにある物の心に作者の心が感応し始める。
あるいは逆に作者の心が物の姿を通して物に乗り移り、物の心となって物の姿を介して、再び作者の心に戻って一体となると考えてもよい。
いわば物心一如(ぶっしんいちにょ)の世界。
写生の醍醐味といえよう。
（ 後藤比奈夫 ）
19.
初日記先行不安とも書けず
（ 後藤比奈夫 ）
20.
飛花落花遊びごころの風となら
（ 後藤比奈夫 ）
21.
あらたまの年ハイにしてシヤイにして
（ 後藤比奈夫 ）
22.
風鈴の音の中なる夕ごころ
（ 後藤比奈夫 ）
23.
水中花にも花了(おわ)りたきこころ
（ 後藤比奈夫 ）
24.
白魚汲みたくさんの目を汲みにけり
（ 後藤比奈夫 ）
25.
滝の面(も)をわが魂の駈け上る
（ 後藤比奈夫 ）
26.
心さしかけぬ日傘で足りぬ分
（ 後藤比奈夫 ）
27.
私はもっと俳句を論ずるのに、心を大切にするのが当然と思うようになった。
そして「俳句は心で作って心を消し去るもの」というのが現在の私流の客観写生の方法。
客観写生の説明に過ぎないのだが、心を少し明るみに出してやろうという試み。
（ 後藤比奈夫 ）
28.
初夢に抜かす現(うつつ)のありしこと
（ 後藤比奈夫 ）
29.
山川草木万物有情（ばんぶつうじょう）の精神は、このようにして生まれてくるものである。
そういった心の交流までも、物の姿だけに託して描くのが、客観写生の全うな方法だと、今も私は信じつづけている。
（ 後藤比奈夫 ）
30.
傀儡師(かいらい)めつむり傀儡(くぐつ)目をひらく
（ 後藤比奈夫 ）

31.
口中(くちなか)の燃えたる愛のチョコレート
（ 後藤比奈夫 ）
32.
蠅はゐず蠅虎(はえとりぐも)のゐる暮し
（ 後藤比奈夫 ）
33.
騙すべき相手なくなり万愚節
（ 後藤比奈夫 ）
34.
桜湯が辛すぎるとは言へずをり
（ 後藤比奈夫 ）
35.
水がまだ味方についてゐぬ泳ぎ
（ 後藤比奈夫 ）
36.
俳句を作るには写生の技法を使うのが一番間違いない。
その写生のために、対象を選び、発想の仕方を定め、表現の言葉を選ぶ。
全て心が感じ頭が働かなければ出来ない作業である。
にも拘らず出来上った作品に主観の匂いがしてはいけないというのが虚子の客観写生である。
（ 後藤比奈夫 ）
37.
はこべにも名札よもぎにまで名札
（ 後藤比奈夫 ）
38.
捕虫網持たせておけば歩く子よ
（ 後藤比奈夫 ）
39.
サングラス掛けて妻にも行くところ
（ 後藤比奈夫 ）
40.
コスモスとしか言ひやうのなき色も
（ 後藤比奈夫 ）

41.
芝のやさしさは冬日が来てきめる
（ 後藤比奈夫 ）
42.
兵糧のごとくに書あり冬籠
（ 後藤比奈夫 ）
43.
一(ひ)と日づつ一と日づつ冬紅葉かな
（ 後藤比奈夫 ）
44.
下萌に心が先に下り立ちし
（ 後藤比奈夫 ）
45.
桃生けて部屋に溢るる慈しみ
（ 後藤比奈夫 ）
46.
火をつけてやりたきほどに枯れしもの
（ 後藤比奈夫 ）
47.
松立ててわが家満更ならぬかな
（ 後藤比奈夫 ）
48.
アネモネの花に妬心(としん)のやうなもの
（ 後藤比奈夫 ）
49.
懐旧のビール必ずほろ苦し
（ 後藤比奈夫 ）
50.
栗のぞきゐて美しき栗の毬(いが)
（ 後藤比奈夫 ）

51.
成行に任せる長寿初暦
（ 後藤比奈夫 ）
52.
男尊の極まる飾兜かな
（ 後藤比奈夫 ）
53.
妻遠くなりし今年の月小さく
（ 後藤比奈夫 ）
54.
生きてあれば何か用生れ秋の暮
（ 後藤比奈夫 ）
55.
独り居(ひとりい)に大年(おおとし)あってなき如し
（ 後藤比奈夫 ）
56.
これよりは赤子に戻り老の春
（ 後藤比奈夫 ）
57.
亡き妻を探しにきたる初雀
（ 後藤比奈夫 ）
58.
柿の木の見てゐる軒の吊し柿
（ 後藤比奈夫 ）
59.
桃の日や齢いくつにならうとも
（ 後藤比奈夫 ）
60.
春を待つ老の心を老いて知る
（ 後藤比奈夫 ）

61.
人もかくあれと泰山木(たいさんぼく)の花
（ 後藤比奈夫 ）
62.
ひとり来し花野ふたりで来し花野
（ 後藤比奈夫 ）
63.
するすると伸びてまだ伸び揚花火
（ 後藤比奈夫 ）
64.
蛇踏んで見せつまらなき男かな
（ 後藤比奈夫 ）
65.
ざくざくといふほど生けし小判草(こばんそう)
（ 後藤比奈夫 ）
66.
生涯に読み切れざりし書も曝(さら)す
（ 後藤比奈夫 ）
67.
親鹿とちがふ子鹿の見てゐるもの
（ 後藤比奈夫 ）
68.
象涼し鼻で物言ひ尾で返事
（ 後藤比奈夫 ）
69.
如何(いか)な衣(きぬ)脱ぐや八岐大蛇(やまたのおろち)なら
（ 後藤比奈夫 ）
70.
向日葵の黄のこれでもかこれでもか
（ 後藤比奈夫 ）

71.
型録(かたろぐ)の鰻重大き鰻の日
（ 後藤比奈夫 ）
72.
聖夜にも打つ寒柝(かんたく)のありしこと
（ 後藤比奈夫 ）
73.
誰にでも道をゆづりて老の春
（ 後藤比奈夫 ）
74.
桜湯に花は一つでよきものを
（ 後藤比奈夫 ）
75.
新じゃがや新たまねぎや主婦たのし
（ 後藤比奈夫 ）
76.
拾ひたる命しみじみ夜の秋
（ 後藤比奈夫 ）
77.
生えてゐるやうに竹の子立ててあり
（ 後藤比奈夫 ）
78.
かと言ひて抱負もなくて老の春
（ 後藤比奈夫 ）
79.
雛のつくものみんな好き雛菊も
（ 後藤比奈夫 ）
80.
寶船(たからぶね)敷くを忘れて見たる夢
（ 後藤比奈夫 ）

81.
何となくペンの動きも春めいて
（ 後藤比奈夫 ）
82.
踊らずに喉を越したる白魚も
（ 後藤比奈夫 ）
83.
クリスマスローズそんなに俯(うつむ)くな
（ 後藤比奈夫 ）
84.
まだ踊り馴れぬ踊子草の群
（ 後藤比奈夫 ）
85.
夜が来れば朝が来るなり青葉木莵
（ 後藤比奈夫 ）
86.
落蝉(おちぜみ)になく空蝉(うつせみ)に命見ゆ
（ 後藤比奈夫 ）
87.
乗初(のりぞめ)は子の押しくるる車椅子
（ 後藤比奈夫 ）
88.
人の世をやさしと思ふ花菜漬
（ 後藤比奈夫 ）
89.
太陽に励まされつつ末枯るる
（ 後藤比奈夫 ）
90.
間違へて秋風と手をつなぎゐし
（ 後藤比奈夫 ）

91.
年玉を妻に包まうかと思ふ
（ 後藤比奈夫 ）
92.
滴りて噴きて溢れて追憶は
（ 後藤比奈夫 ）
93.
硯(すずり)より心を洗ふ一苦労
（ 後藤比奈夫 ）
94.
閉めてある障子が人を焦がれをり
（ 後藤比奈夫 ）
95.
無い智恵を絞り絞りて浮いてくる
（ 後藤比奈夫 ）
96.
括(くく)られて咲くものばかり冬の庭
（ 後藤比奈夫 ）
97.
どこやらが冬どこやらが春の雲
（ 後藤比奈夫 ）
98.
短日(たんじつ)をけふは上手に使ひけり
（ 後藤比奈夫 ）
99.
明日ありと咲き明日なしと朴(ほお)咲けり
（ 後藤比奈夫 ）
100.
父の日の父に甘えに来たらしき
（ 後藤比奈夫 ）

【 日常の暮らし 】
【 成長する機会を捨てる 】
【 不平不満が消える 】
【 いい料理人 】
【 本妻 】
【 真実を注いだ教え 】
【 水曜日 】
【 全能力を要求する目標 】
【 メイ・ウエストの名言 】
【 弱さに初めて気づく 】
【 人生を生きる意味 】
【 他人の不幸を願う 】
【 無尽蔵のお金 】
【 進んで明かりをつける 】
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