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701.
水の光り。
日の光り。
やわらかな風。
葉のしたたり。
おおきな木。
花の色。
草の色。
土の色。
鳥の影。
雲の影。
ふだんはいそがしさのなかに忘れてしまっている「何か」が、
それらのあいだにあるとおもう。
いつもは忘れている「何か」、
それが何か思いだせない「何か」、
何かとしかいえない「何か」を思いだしたいとき、
そこにいったら思いだせるような気がする。
そうした心がふっと開かれてゆくような、
開かれた場所が好きだ。
（ 長田弘 ）
（ Osada Hiroshi ）
702.
あまりにも菊晴れて死ぬかもしれず
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）
703.
何事ぞ花見る人の長刀(なががたな)
（ 向井去来 ）
（ Mukai Kyorai ）
704.
菜の花の暮(く)るるや人を待ち得たり
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
705.
快楽とは堰(せき)を落ちゆく花筏(はないかだ)
（ 大竹照子 ）
（ Ootake Teruko ）
706.
峡深し夕日は花にだけ届く
（ 稲畑汀子 ）
（ Takeshita Sizunojo ）
707.
揺るるらむ冬の銀河に花を挿し
（ 八田木枯 ）
（ Hatta Kogarashi ）
708.
花びらの一つを恋ふる静電気
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）
709.
玄関に満ちたる百合の香へ帰る
（ 池田澄子 ）
（ Ikeda Sumiko ）
710.
思ひとほし柊の花に立ちどまる
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
711.
うしろ手に花野夕山(ゆうやま)旅を閉じ
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
712.
たんぽゝもここに賑(にぎ)はひをりし色
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
713.
平凡がよしと紫苑(しおん)の咲きにけり
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
714.
死者に咲く賞杯の白チューリップ
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
715.
向日葵(ひまわり)や黄といふ色は脳に染む
（ 京極杞陽 ）
（ Kyougoku Kiyou ）
716.
八ツ手(やつで)散る楽譜の音符散るごとく
（ 竹下しづの女 ）
（ Takeshita Sizunojo ）
717.
ひまわりの愕然として一揺れす
（ 菅裸馬 ）
（ Suga Raba ）
718.
花吹雪磁気みなぎらす変電所
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
719.
空をゆくひとかたまりの花吹雪
（ 高野素十 ）
（ Takano Sujuu ）
720.
ゆつくりと光が通る牡丹(ぼたん)の芽
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
721.
この花の咲くにつけ又散るにつけ
（ 大久保橙青 ）
（ Ookubo Tousei ）
722.
寝て食べて花を見ること今日大事
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
723.
菜の花や月は東に日は西に
（ 与謝蕪村 ）
（ Yosano Buson ）
724.
梅一輪　一輪ずつの暖かさ
（ 作者不詳 ）
725.
藤こぼれ厳(いか)きつめたき石の椅子
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
726.
はつ雪やしまひ忘れし鉢のばら
（ 久保より江 ）
（ Kubo Yorie ）
727.
椿落ちてころがる暗き机の下
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
728.
恋は、刺草(いらくさ)と百合(ゆり)の花を同時に濡らす夜露である。
（ スウェーデンのことわざ・格言 ）
（ Sweden saying ）
729.
ひるがほに花こそ似たれ薩摩藷(さつまいも)
（ 安藤橡面坊 ）
（ Andou Tochimenbou ）
730.
春秋冬(はるあきふゆ)冬を百日桜かな
（ 松根東洋城 ）
（ Matsune Touyoujou ）

731.
他界とは桜に透ける向う側
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
732.
残りゐて早く散りたき花ばかり
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
733.
朝顔を数えきれずに　立ち去りぬ
（ 伊丹三樹彦 ）
（ Itani Mikihiko ）
734.
咲いて色揃はぬこともチューリップ
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
735.
花蕎麦(はなそば)をさびしき時は思ひ出よ
（ 鈴鹿野風呂 ）
（ Suzuka Noburo ）
736.
吾(わ)が影へ向日葵(ひまわり)の影王冠たり
（ 川口重美 ）
（ Kawaguchi Shigemi ）
737.
日輪を送りて月の牡丹(ぼたん)かな
（ 渡辺水巴 ）
（ Watanabe Suiha ）
738.
チューリップ花びら外れかけてをり
（ 波多野爽波 ）
（ Hatano Souha ）
739.
向日葵(ひまわり)の滾(たぎ)り汝も吾(われ)も他生の血
（ 泉風信子 ）
（ Izumi Fuushinshi ）
740.
しづかにしづかに地球はめぐり萩(はぎ)の咲き
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）

741.
月光を撒くごとく百合ひらきけり
（ 金子敦 ）
（ Kaneko Atsushi ）
742.
馬駈けて菜の花の黄を引伸ばす
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
743.
たんぽぽや折折さます蝶の夢
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
744.
七人と犬一匹のさくらかな
（ 小西昭夫 ）
（ Konishi Akio ）
745.
花菖蒲(しょうぶ)夜明けの色を剪(き)つて来る
（ 金箱戈止夫 ）
（ Kanebako Kashio ）
746.
停留所まで豆腐屋の打水(うちみず)は
（ 佐藤文香 ）
（ Satou Ayaka ）
747.
枯菊(かれぎく)のもゆる火中(ほなか)に花触れあふ
（ 天野莫秋子 ）
（ Amano Bakushuushi ）
748.
石蕗(つわ)咲けり酷使して身のいとほしや
（ 岡本眸 ）
（ Okamoto Hitomi ）
749.
月見草灯(ひ)よりも白し蛾をさそふ
（ 竹下しづの女 ）
（ Takeshita Sizunojo ）
750.
大花野ときどき雲の影に入る
（ 加藤瑠璃子 ）
（ Katou Ruriko ）

751.
牡丹(ぼたん)散りて打(うち)かさなりぬ二三片
（ 与謝蕪村 ）
（ Yosano Buson ）
752.
菜の花の一本でいる明るさよ
（ 折笠美秋 ）
（ Orisaka Bishuu ）
753.
菜の花や河原に足のやはらかき
（ 田中裕明 ）
（ Tanaka Hiroaki ）
754.
書きものの父にたんぽぽ置かれけり
（ 加藤喜代子 ）
（ Katou Kiyoko ）
755.
一人で過ごす静かなひととき、瞑想、祈り、音楽、考えたり読書したり、勉強したり働いたりというような心を集中させる作業。
それは肉体的、知的、芸術的、どんなことであれ、自己から流れ出る創造的な時間であればいい。
遠大な計画や大きな仕事であるには及ばない。
だが自分のものでなければならない。
朝花瓶に花を活けるだけで、忙しい一日に静かな心をもたらす。
大事なのは、しばらく心が内に向くということなのだ。
（ アン・モロー・リンドバーグ ）
（ Anne Morrow Lindbergh ）
756.
花を与えるのは自然であり、それを編んで花輪にするのが芸術である。
（ ゲーテ ）
（ Goethe ）
757.
世の中は　地獄の上の　花見かな
（ 小林一茶 ）
（ Kobayashi Issa ）
758.
布地は染め具合で、酒は香りで、花は匂いで、人は言葉遣いで判断される。
（ カイエ ）
759.
一
薔薇ノ木ニ
薔薇ノ花サク。
ナニゴトノ不思議ナケレド。

ニ
薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。
（ 北原白秋 ）
（ Kitahara Hakushuu ）
760.
人間の本性のうちで最も悲劇的なことといえば、
どの人でも人生から逃避したくなるという点であろう。
私たちは誰も、水平線の彼方にある魔法のバラ園を夢見ている。
そのくせに、わが家の窓の外で今日も咲きほこるバラの花など見向きもしないのだ。
（ デール・カーネギー ）
（ Dale Carnegie ）

761.
恋は路傍の花
（ 劉備玄徳 ）
（ 『三国志』 ）
（ Ryuubi Gentoku ）
（ Sangokushi ）
762.
愛せらるるは薔薇の花
愛することは薔薇の棘
花はあまりに散り易し
棘はあまりに身に痛し
（ 堀口大學 ）
（ Horiguchi Daigaku ）
763.
ほんとに人生の苦労らしい苦労をなめたにちがいない人間は、そんな惨苦と闘って来たようにも見えないほど、明るくて、温和に、そしてどこか風雨に洗われた花の淡々たる姿のように、さりげない人がらをもつに至るものである。
（ 作者不詳 ）
764.
結婚式もお葬式も同じようなものです。
違うのは、もらったお花の香りを自分でかげることくらいよ。
（ グレース・ハンセン ）
765.
友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である。
（ コッツェブー ）
（ Kotzebue ）
766.
友情と恋愛は一つの根から生えた二本の植物である。
ただ、恋愛に花が少しばかり多く咲いているにすぎない。
（ フリードリヒ・ゴットリープ・クロプシュトック ）
（ Friedrich Gottlieb Klopstock ）
767.
咲くということはこの季節が好きだからだろう。
好きということは素晴らしいこと。
人だって不毛の愛に花を咲かせたりする。
（ 作者不詳 ）
768.
あなたは、これらのかわいい花たちの語る隠れた言葉を知っているか？
昼間は真理を、夜は愛を……これこそ彼らが語る言葉なのだ。
（ ハインリッヒ・ハイネ ）
（ Heinrich Heine ）
769.
人の弱いは草のごとく、
その栄えは野の花のごとく。
（ 『旧約聖書』 ）
（ ユダヤの名言・格言・ことわざ ）
（ Kyuuyaku Seisho ）
（ Judea ）
770.
自分が知って知らずに関わらず、蒔いたとおりに花が咲く。
（ 中村天風 ）
（ Nakamura Tenpuu ）

771.
人生は短く、苦しみは絶えない。
花のように咲き出ては、しおれ、影のように移ろい、永らえることはない。
（ 『旧約聖書』 ）
（ ユダヤの名言・格言・ことわざ ）
（ Kyuuyaku Seisho ）
（ Judea ）
772.
富んでいる者は、自分が低くされることを誇りに思いなさい。
富んでいる者は草花のように滅び去るからです。
（ 『新約聖書』 ）
（ Shinyaku Seisho ）
773.
花は地上にあるすべてのもの。
蜜は善、美しいもの。
吸うというのは、それを探し続けるということ。
それが人間のような気がする。
おいしい蜜を吸いながら歩いているから、人生は楽しくてしようがない。
（ 山本和夫 ）
774.
凡人は、若いときは「人生は長い」と油断し、中年は「これでいいのか」と懐疑と焦りを感じ、そして熟年になると「こんなものだったのか」と諦めて終わる。
賢者は、若いときに自分を試し、中年になると自力を整え、熟年になって花を咲かせる。
（ 久保博正 ）
775.
俳句人口が三百万人。
この人たちが花鳥風月、つまり自然環境を守ると大変な力になるんですけどね。
（ 永六輔 ）
（ Ei Rokusuke ）
776.
お見舞いの花ですが、花びらが散らないもの。
花粉が少ないもの。
香りも強くないもの。
この三つで季節の花を選んでください。
（ 永六輔 ）
（ Ei Rokusuke ）
777.
まだそこにきのふがありし落椿
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）
778.
生き物はなべて孤独死梅ひらく
（ 橋本喜夫 ）
（ Hashimoto Yoshio ）
779.
あぢさゐや斜めの雨は見えやすし
（ 河内静魚 ）
（ Kawauchi Shizuo ）
780.
笑ひたる声の残れる桐の花
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）

781.
人間は高慢な思いをいだくべからず。
高慢は花をつけ破滅の種を実らせる。
実りの秋はとめどなき涙を刈り取る。
（ アイスキュロス ）
（ Aischylos ）
782.
グラジオラスゆるるは誰か来るごとし
（ 永田耕一郎 ）
（ Nagata Kouichirou ）
783.
彼のことを聞いてみたくて目を薔薇に
（ 今井千鶴子 ）
（ Imai Chizuko ）
784.
二階より地のひるがおを吹く友や
（ 安井浩司 ）
（ Yasui Kouji ）
785.
年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず
（ 劉希夷 ）
786.
石蕗(つわ)咲いていそぐとみえぬ帆のいそぎ
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
787.
春来たれば、万物芽ぐみ花咲く。
夏来たれば、万物、生々溌剌(せいせいはつらつ)として繁茂する。
秋は万物実りを結び、冬は万物自ら蔵して冬眠に入る。
（ 蔡沢 ）
788.
部屋に花を飾り、静かな音楽を流し、美しいインテリアに囲まれて暮らしていれば、その波動で人は勝手に美しくなります。
美しさを手に入れるのは、実は簡単なことなのです。
（ 美輪明宏 ）
（ Miwa Akihiro ）
789.
こんなに空が青くて、こんなに小鳥がさえずっていて、音楽も、きれいな衣裳も、そして壺(つぼ)いっぱいの花までもが、みんな自分のものだと言うときに、こわくない人なんてあるはずがない。
ああ、すばらしい朝のおそろしさ！
（ 寺山修司 ）
（ Terayama Shuuji ）
790.
『この花はおれが咲かせたんだ』
土の中の肥料は
そんな自己顕示をしない
おれのような
（ 相田みつを ）
（ Aida Mitsuwo ）

791.
人間は複雑な生き物だ。
砂漠には花を咲かせるのに、湖は涸らしてしまう。
（ ジル・スターン ）
792.
我々は花を散らす風において歓びあるいは傷むところの我々自身を見いだすごとく、ひでりのころに樹木を直射する日光において心萎（な）える我々自身を了解する。
すなわち我々は「風土」において我々自身を、間柄としての我々自身を、見いだすのである。
（ 和辻哲郎 ）
（ Watsuji Tetsurou ）
793.
鉄は赤く熱しているうちに打つべきである。
花は満開のうちに眺むべきである。
（ 太宰治 ）
（ Dazai Osamu ）
794.
「自分の弱さに向き合ってこそ努力は実る」
自分を分析して、検証するという作業は、自分の弱さやコンプレックスと向き合うことにもなるので、決して楽なことではありません。
けれど、逃げずにきちんとこの作業をすれば、必ず努力は実り、幸せの花を咲かせることができます。
（ IKKO ）
795.
ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った。
花の美しさを見つけたのは人間だし、花を愛するのも人間だもの。
（ 太宰治 ）
（ Dazai Osamu ）
796.
（情緒とは）野に咲く一輪のスミレを美しいと思う心。
（ 岡潔 ）
（ Oka Kiyoshi ）
797.
たのしみは朝起きいでて昨日まで
なかり花の咲ける見る時
（ 橘曙覧 ）
（ Tachibanano Akemi ）
798.
さびしきは
色にしたしまぬ目のゆゑと
赤き花など買はせけるかな
（ 石川啄木 ）
（ Ishikawa Takuboku ）
799.
古くからの季節暦どおりに、その日が来ると自然は、花を開かせます。
あ、咲いている、と思わずつぶやいて、非常にうれしくなりました。
こういう風景というものがわれわれを支えている。
（ 長田弘 ）
（ Osada Hiroshi ）
800.
芸事というのは何でもそうでしょうけど、幹と根にいちばん近いところから発したものが、花になったり、風に吹かれた葉っぱになったりと、そうやって見えるところまでいけば、いちばん、完璧にいいんだと思います。
（ 吉本隆明 ）
（ Yoshimoto Takaaki ）

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