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[ 名言 ]
自分の「徒党」の中に居る好かない奴ほど始末に困るものはない。
それは一生、自分を憂鬱にする種だということを私は知っているのである。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『徒党について』

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孤高。
それは、昔から下手(へた)なお世辞の言葉として使い古され、そのお世辞を奉られている人にお目にかかってみると、ただいやな人間で、誰でもその人につき合うのはご免、そのような質(たち)の人が多いようである。
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そうして、その所謂(いわゆる)「孤高」の人は、やたらと口をゆがめて「群」をののしる。
なぜ、どうしてののしるのかわけがわからぬ。
ただ「群」をののしり、己れの所謂「孤高」を誇るのが、外国にも、日本にも昔はみな偉い人たちが「孤高」であったという伝説に便乗して、以(もっ)て吾が身の侘(わ)びしさをごまかしている様子のようにも思われる。
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「孤高」と自らを号しているものには注意をしなければならぬ。
第一、それは、キザである。
ほとんど例外なく、「見破られかけたタルチュフ」である。
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どだい、この世の中に、「孤高」ということは、無いのである。
孤独ということは、あり得るかもしれない。
いや、むしろ、「孤低」の人こそ多いように思われる。
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私の現在の立場から言うならば、私は、いい友達が欲しくてならぬけれども、誰も私と遊んでくれないから、勢い、「孤低」にならざるを得ないのだ。

と言っても、それも嘘で、私は私なりに「徒党」の苦しさが予感せられ、むしろ「孤低」を選んだほうが、それだって決して結構なものではないが、むしろそのほうに住んでいたほうが、気楽だと思われるから、敢(あ)えて親友交歓を行わないだけのことなのである。
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それでまた「徒党」について少し言ってみたいが、私にとって(ほかの人は、どうだか知らない)最も苦痛なのは、「徒党」の一味の馬鹿らしいものを馬鹿らしいとも言えず、かえって賞讃を送らなければならぬ義務の負担である。
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「徒党」というものは、はたから見ると、所謂「友情」によってつながり、十把(ぱ)一からげ、と言っては悪いが、応援団の拍手のごとく、まことに小気味よく歩調だか口調だかそろっているようだが、じつは、最も憎悪しているものは、その同じ「徒党」の中に居る人間なのである。
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かえって、内心、頼りにしている人間は、自分の「徒党」の敵手の中に居るものである。
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自分の「徒党」の中に居る好かない奴ほど始末に困るものはない。
それは一生、自分を憂鬱にする種だということを私は知っているのである。
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新しい徒党の形式、それは仲間同士、公然と裏切るところからはじまるかもしれない。
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友情。
信頼。
私は、それを「徒党」の中に見たことが無い。
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