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たとえ一坪の牢獄であっても、厳粛な懺悔の道場であることをさとった人に、なつかしいこの社会が、却(かえ)ってつめたい牢獄となって迎えることは、あまりに悲しいとおもう。
九条武子［くじょう・たけこ］
（教育者、京都女子学園・京都女子大学設立者、歌人、社会運動活動家、仏教婦人会創設者、1887〜1928） 自著『無憂華』 「懺悔の道場」 【 九条武子の名言 】
〈全文〉
獄屋(ごくや)の高い窓に、流れて過ぎる雲、月と星はただ静寂な光をもってさし覗(のぞ)く。 囚人たちは、何時(いつ)に変らぬ大空を仰(あお)いでは、同じ人生に生きていることを知るのであった。 さびしい牢獄の、こうした朝夕をくり返さねばならぬ人たちは、むしろ犯さざりし日の重々しい心にくらべて、裁きのあとのすがしさを、しみじみと感ずるのであった。 罪の前には、みずからの業因(ごういん)の断ちがたきを歎(なげ)き、救いの前には、純な懺悔の心にかえる。 それは却って重罪犯人に多いと云(い)われている。 たとえ一坪の牢獄であっても、厳粛な懺悔の道場であることをさとった人に、なつかしいこの社会が、却(かえ)ってつめたい牢獄となって迎えることは、あまりに悲しいとおもう。
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