|
替えがたいものは、幸福のようなものだ。
長田弘[おさだ・ひろし]
(詩人、1939〜2015) 詩「大いなる、小さなものについて」 詩集『世界はうつくしいと』
〈全文〉
替えがたいものの話をしよう。 それは、たとえば、引き出しの奥にある、 百年前の木でつくった一本の鉛筆のようなものだ。 古い木箱の薬箱のなかにある、 魂に効くとかいう、苦い散薬のようなものだ。 あるいは、箪笥(たんす)のなかにある、 ひそやかな、懐かしい時間のようなものだ。 __ Link __ 数えきれないCDの棚にひそんでいる、 千の旋律、千の悲哀、千の思い出のようなものだ。 マルティヌーの「ダブル・コンチェルト」や、 メシアンの「鳥のカタログ」のような。 それから、ことばだ。それも、 どうしても、ことばにならないことばだ。 そして、思いだそうとしても、思いだせない、 しかし、もう一ど、確かめたいと思うことばだ。 __ Link __ 替えがたいものは、幸福のようなものだ。 __ Link __ 世界はいつも、どこかで、 途方もない戦争をしている。 幸福は、途方もないものではない。 __ Link __ どれほど不完全なものにすぎなくとも、 人の感受性にとっての、大いなるものは、 すぐ目の前にある小さなもの、小さな存在だと思う。 __ Link __ 幸福は、窓の外にもある。樹の下にもある。 小さな庭にもある。(__ Link __)ゼラニウム。 ペンタス。ユーリオプシス・デージー。 インパチェンス。フロックス・ドラモンディ。 目の前に咲きこぼれる、あざやかな 花々の名を、どれだけ知っているだろう? 何を知っているだろう? 何のたくらむところなく、 日々をうつくしくしているものらについて。 __ Link __
1.
2.
( 賀原夏子 )
3.
4.
5.
( トミー・トンプソン )
6.
( 作者不詳 )
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
20.
21.
22.
23.
24.
25.
26.
27.
( セントジェルジ )
28.
29.
30.
31.
32.
33.
34.
35.
36.
【 ポール・ダグラス 】
【 ピーター・N・デール 】 【 青井忠雄 】 【 さくらももこ 】 【 オリヴァー・サックス 】 【 新川和江 】 【 明庵栄西 】 【 軌保博光 】 【 山口瞳 】 【 アーサー・ケストラー 】 【 アウエルバッハ 】 【 エルネスト・デュピュイ 】 【 ダグラス・マッカーサー 】 【 藤子・F・不二雄 】 【 リリアン・スミス 】 【 小林秀雄 】 【 ツルゲーネフ 】 【 ウィリアム・ロー 】 【 殉教者が少ない 】
【 十倍の力がある 】 【 仕えることを習う 】 【 骨身にしみる 】 【 胸の中の火 】 【 サイコロを振る 】 【 侃々諤々の議論 】 【 魚が戻ってくる 】 【 シワは勲章 】 【 人類の犯罪 】 【 夢への欲求 】 【 自分自身に迷惑をかけない 】 【 日頃の行動を顧みる 】 【 荒れ狂う海面 】
|