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[ 名言 ]
ろくな仕事もしていない癖に、
その生活に於(お)いて孤高を装い、
卑屈に拗(す)ねて安易に絶望と虚無を口にして、
ひたすら魅力ある風格を衒(てら)い、
ひとを笑わせ自分もでれでれ甘えて恐悦(きょうえつ)がっているような詩人を、
自分は、底知れぬほど軽蔑しています。
卑怯であると思う。
横着であると思う。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『風の便り』
井原退蔵が木戸一郎にあてた手紙より

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孤高
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笑い・ユーモア・冗談
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軽蔑
卑怯

[ 全文・続き ]
〈全文〉
ろくな仕事もしていない癖に、
その生活に於(お)いて孤高を装い、
卑屈に拗(す)ねて安易に絶望と虚無を口にして、
ひたすら魅力ある風格を衒(てら)い、
ひとを笑わせ自分もでれでれ甘えて恐悦(きょうえつ)がっているような詩人を、
自分は、底知れぬほど軽蔑しています。
卑怯であると思う。
横着であると思う。
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作品に依(よ)らずに、
その人物に依ってひとに尊敬せられ愛されようと
さまざまに心をくだいて工夫している作家は
古来たくさんあったようだが、
例外なく狡猾(こうかつ)な、なまけものであります。
極端な、ヒステリックな虚栄家であります。
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作品を発表するという事は、
恥を掻く事であります。
神に告白する事であります。
そうして、もっと重大なことは、
その告白に依って神からゆるされるのでは無くて、
神の罰を受ける事であります。
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自分には、いつも作品だけが問題です。
作家の人間的魅力などというものは、
てんで信じて居(お)りません。
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人間は、誰でも、くだらなくて卑しいものだと思っています。
作品だけが救いであります。
仕事をするより他はありません。
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