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こんにちを充分に生きる、こと以外に
人間の人間らしいよろこびはないのだ。 山本周五郎[やまもと・しゅうごろう]
(大正〜昭和の小説家、1903〜1967) 「作品の跡を訪ねて──虚空遍歴」(1963年)
〈全文〉
人間の一生というものは、 脇から見ると 平板で徒労の積みかさねのようにみえるが、 内部をつぶさにさぐると、 それぞれがみな、 身も心もすりへらすようなおもいで 自分とたたかい 世間とたたかっているのである。 __ Link __ その業績によって高い世評を得る者もいるし、 名も知られずに消えてゆく者もある。 しかし大切なことは、 その人間がしんじつ 自分の一生を生きぬいたかどうか、 という点にかかっているのだ。 __ Link __ 「黄金でつくられた碑も いつかは消滅してしまう」 ということを書いたことがあった。 __ Link __ 大切なのは「生きている」ことであり、 「どう生きるか」なのである。 __ Link __ 百年のちに知己(ちき)を求めるとか、 後世に名を残すなどという考えが、 私の少年時代には一種のオーソリティーをもっていた。 ──だが百年のちの知己や名声は、 当人にとってまったく無縁なものにすぎない。 __ Link __ こんにちを充分に生きる、こと以外に 人間の人間らしいよろこびはないのだ。 __ Link __
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「他人の心はけっきょくのところ分からない」
という素朴な日常的実感は、 あくまでも部分的な不可知性にとどまっている。 相手を疑ってかかっているときでさえ、 その人の心の動きのいちいちすべてを疑うわけではない。
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