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[ 名言 ]
石(=墓石)に最小限の文字を刻みこむように、記憶に最小限のことばを刻むことは、いまでも詩人の仕事の一つたりえているだろうか。

[ 出典 ]
長田弘[おさだ・ひろし]
(詩人、1939〜2015)
詩集『死者の贈り物』
あとがき

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〈抜粋文全文〉
逝ったものが、いま、ここに遺(のこ)してゆくものは、あたたかなかなしみと、簡潔なことばだと、ふりかえってあらためて感じる。
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死について、そしてよい葡萄酒の一杯について書くのが詩、という箴言を読んだことがある。
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碑銘を記し、死者を悼むことは、ふるくから世界のどこでだろうと、詩人の仕事の一つだった。
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石に最小限の文字を刻みこむように、記憶に最小限のことばを刻むことは、いまでも詩人の仕事の一つたりえているだろうかということを考える。
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現に生きてあるものにとっての現在というのは、死者にとっての未来だ。
それだからこそ、親しいものの喪から、わたしが受けとってきたものは、一人の現在をよりふかく、よく生きるためのことばだったと思える。
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