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101.
一撃の罅(ひび)が罅よぶ夏氷(なつごおり)
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
102.
落合ふて音なくなれる清水哉(かな)
（ 与謝蕪村 ）
（ Yosano Buson ）
103.
ひるは手に子供もとらぬ蛍かな
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
104.
月下美人しぼむ明日より何待たむ
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
105.
色見本この朝焼の色はなく
（ 藤井あかり ）
（ Fujii Akari ）
106.
万緑も人の情も身に染みて
（ 江國滋 ）
（ Ekuni Shigeru ）
107.
着こなしの上手に夏を痩せにけり
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
108.
萬(まん)の向日葵(ひまわり)同じ方むく怖さ
（ 大竹照子 ）
（ Ootake Teruko ）
109.
いくばくの余命を得たり更衣(ころもがえ)
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
110.
病む人に白き嘘言ふ朝ぐもり
（ 堀口星眠 ）
（ Horiguchi Seimin ）
111.
涼風(すずかぜ)によき計画の又生れ
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）
112.
みづすまし味方といふは散り易き
（ 鷹羽狩行 ）
（ Takaha Shugyou ）
113.
破れ傘心に雨の降る日あり
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
114.
子の夢のころころ変はり罌粟坊主(けしぼうず)
（ 落合由季女 ）
（ Ochiai Yukijo ）
115.
水飯(すいはん)に晩餐(ばんさん)ひそと母子かな
（ 竹下しづの女 ）
（ Takeshita Sizunojo ）
116.
これよりの心きめんと昼寝かな
（ 深見けん二 ）
（ Fukami Kenji ）
117.
おむすびの塩を多めに夏浅し
（ 赤木真理 ）
（ Akagi Mari ）
118.
雨の蝉鳴きつまづきしより聞かず
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
119.
夢のまま終りたくなし青胡桃(あおぐるみ)
（ 赤羽正行 ）
（ Akabane Masayuki ）
120.
母の日や大方の母けふも疲れ
（ 及川貞 ）
121.
蟻の国の事知らず掃く箒(はうき)哉(かな)
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
122.
母の日の筆談といふ贈り物
（ 橋本敏子 ）
（ Hashimoto Toshiko ）
123.
母の日や鏡のぞけば母の顔
（ 瀬川秋子 ）
124.
野茨ややぶれし夢は忘れ易し
（ 安井浩司 ）
（ Yasui Kouji ）
125.
母の日や老いても母の恋しくて
（ 大平保子 ）
（ Oohira Yasuko ）
126.
ラムネ飲んでその泡のごと別れたる
（ 和田博雄 ）
127.
かたつむり放浪の跡見えにけり
（ 七瀬音弥 ）
（ Nanase Otoya ）
128.
薔薇園の薔薇の醜態見てしまふ
（ 嶋崎茂子 ）
（ Shimazaki Shigeko ）
129.
髪洗ひひと日の憂ひ流したり
（ 加藤静江〔俳人〕 ）
（ Katou Shizue2 ）
130.
生きていること思い出す夏座敷
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）

131.
水中花明日あるために美しく
（ 岸風三楼 ）
132.
等閑(なおざり)に見しが是(これ)なり落し文
（ 松瀬青々 ）
（ Matsuse Seisei ）
133.
焼酎を野越え山越え酌み交はす
（ 菅裸馬 ）
（ Suga Raba ）
134.
我(わが)ものに植田(うえた)の蛙(かわず)啼きつのる
（ 加藤暁台 ）
（ Katou Kyoutai ）
135.
けしの花見てゐるうちは散らざりし
（ 加舎白雄 ）
（ Kaya Shirao ）
136.
月下汗だくずつとおほきく手を振り合ふ
（ 佐藤文香 ）
（ Satou Ayaka ）
137.
蝙蝠(こうもり)の浮世の視線持てあます
（ 佐藤文香 ）
（ Satou Ayaka ）
138.
汗をかき切つてどうでもよくなりし
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
139.
いまは亡きひとと螢を追ひゐたり
（ 齋藤愼爾 ）
（ Saitou Shinji ）
140.
螢火(ほたるび)を少年くれる少女くれず
（ 橋本美代子 ）
（ Hashimoto Miyoko ）

141.
冷し瓜休んでゐるとわかるやうに
（ 佐藤文香 ）
（ Satou Ayaka ）
142.
美しき緑走れり夏料理
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）
143.
ただ妻の支持のみ確か蟇(ひき)低音(ひくね)
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
144.
夫の手に手を添へ螢覗きけり
（ 松山直美 ）
145.
露骨言葉に男いきいき熱帯夜
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
146.
生きるには不便なかたち兜虫
（ 岡本久一 ）
（ Okamoto Hisaichi ）
147.
今を音たてず此(こ)の世に金魚で居る
（ 池田澄子 ）
（ Ikeda Sumiko ）
148.
おのが火より逃れられずに蛍飛ぶ
（ 加藤燕雨 ）
149.
がむしゃらにはたらきし汗ぬぐふかな
（ 久保田万太郎 ）
（ Kubota Mantarou ）
150.
切羽(せっぱ)とは詰まるものなり油蟲(あぶらむし)
（ 中原道夫 ）
（ Nakahara Michio ）

151.
古びゆく手足いとおし旱星(ひでりぼし)
（ 池田澄子 ）
（ Ikeda Sumiko ）
152.
少年は必ず老いて夏惜しむ
（ 八田木枯 ）
（ Hatta Kogarashi ）
153.
藪(やぶ)つ蚊を打つまでは目の澄んでゐし
（ 藤井あかり ）
（ Fujii Akari ）
154.
鳴かぬなら　それもまたよし　ホトトギス
（ 松下幸之助 ）
（ Matsushita Kounosuke ）
155.
籐椅子(とういす)やどこへも行かぬことも旅
（ 橋本喜夫 ）
（ Hashimoto Yoshio ）
156.
旅鞄(かばん)開けて着なれし古浴衣
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
157.
破れ傘てふ抵抗をする名かな
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
158.
雲の峯見る見る雲を吐かんとす
（ 寺田寅彦 ）
（ Terada Torahiko ）
159.
新緑のしづくとなりし赤子かな
（ 吉本宣子 ）
（ Yoshimoto Nobuko ）
160.
万緑やいのちは水の匂いして
（ 東金夢明 ）
（ Tougane Mumei ）

161.
夕焼くる子らにやさしきことを言ふ
（ 三谷昭 ）
162.
端居して後姿は考へず
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
163.
先(ま)づ汗の顔に親しみ初対面
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
164.
叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな
（ 夏目漱石 ）
（ Natsume Souseki ）
165.
叩かれて蚊を吐く昼の木魚かな
（ 蜀山人［大田南畝］ ）
（ Shokusanjin ）
166.
月下美人呼ぶ人来ねば周章(しゅうしょう)す
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
167.
初恋は儚く消えし遠花火
（ 茂木とみ ）
168.
虹を見て思ひ思ひに美しき
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
169.
鳴かぬなら、静かでいいよ、ホトトギス
（ 萩本欽一 ）
（ Hagimoto Kinichi ）
170.
ハンケチがまだ落ちて居る戻り道であつた
（ 尾崎放哉 ）
（ Ozaki Housai ）

171.
頓(やが)て死ぬけしきは見えず?の声
（ 松尾芭蕉 ）
（ Matsuo Bashou ）
172.
蟇(ひき)誰かものいへ声かぎり
（ 加藤楸邨 ）
（ Katou Shuuson ）
173.
食べるだけ少し頂く夏蕨(わらび)
（ 金箱戈止夫 ）
（ Kanebako Kashio ）
174.
気がゆるむたびの出目金魚ごこち哉(かな)
（ 池田澄子 ）
（ Ikeda Sumiko ）
175.
ソーダ水言訳(いいわけ)ばかりきかされぬ
（ 加藤楸邨 ）
（ Katou Shuuson ）
176.
面影や蛍火消えてそれも消え
（ 上田五千石 ）
（ Ueda Gosengoku ）
177.
相逢うて飯食う疲れ遠花火
（ 池田澄子 ）
（ Ikeda Sumiko ）
178.
老鶯(ろうおう)や泪(なみだ)たまれば啼きにけり
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
179.
麦よ死は黄一色と思いこむ
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
180.
詩を書いて　一生綿々　蝸牛(かたつむり)
（ 伊丹三樹彦 ）
（ Itani Mikihiko ）

181.
何はなくとも青田道あればよし
（ 橋本敏子 ）
（ Hashimoto Toshiko ）
182.
手花火のこぼす火の色水の色
（ 後藤夜半 ）
（ Gotou Yahan ）
183.
向日葵をつよく彩る色は黒
（ 京極杞陽 ）
（ Kyougoku Kiyou ）
184.
手花火のうしろほとほと隙だらけ
（ 長谷川千枝子 ）
（ Hasegawa Chieko ）
185.
頭の中で白い夏野となつてゐる
（ 高屋窓秋 ）
（ Takaya Soushuu ）
186.
六月猫が曲つた方へ曲らう
（ 川口重美 ）
（ Kawaguchi Shigemi ）
187.
蠅はゐず蠅虎(はえとりぐも)のゐる暮し
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
188.
妻に供華(くげ)ぽとんと咲かす水中花
（ 細見しゅこう ）
（ Hosomi Shukou ）
189.
糊(のり)利いて肌につれなき浴衣かな
（ 日野草城 ）
（ Hino Soujou ）
190.
とりとめし玉の命や更衣(ころもがえ)
（ 長谷川櫂 ）
（ Hasegawa Kai ）

191.
猫の子の巾着(きんちゃく)なぶる涼み哉(かな)
（ 向井去来 ）
（ Mukai Kyorai ）
192.
かき氷くづしどうでもよかりけり
（ 奥坂まや ）
（ Okuzaka Maya ）
193.
浴衣着てからだが思ひ出す風評
（ すずきりつ ）
194.
含羞の一つの容(かたち)破れ傘
（ 高澤良一 ）
（ Takazawa Yoshikazu ）
195.
破れ傘(やぶれがさ)一境涯と眺めやる
（ 後藤夜半 ）
（ Gotou Yahan ）
196.
一輪の花となりたる揚花火(あげはなび)
（ 山口誓子 ）
（ Yamaguchi Seishi ）
197.
夏蜜柑のぼりきれば坂せんぶ見える
（ 佐藤文香 ）
（ Satou Ayaka ）
198.
ほうたるを待つ横顔に加はりぬ
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）
199.
風鈴とたそがれてゐしひとりかな
（ 加藤楸邨 ）
（ Katou Shuuson ）
200.
命惜しまむ冷麦(ひやむぎ)のうまかりし
（ 森澄雄 ）
（ Mori Sumio ）

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