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601.
永き日も日暮はありて暮永し
（ 高橋睦郎 ）
（ Takahashi Mutsuo ）
602.
いつも鍵置きしところに紙風船
（ 長嶺千晶 ）
（ Nagamine Chiaki ）
603.
しあわせに目もあけられず花吹雪
（ 鷹羽狩行 ）
（ Takaha Shugyou ）
604.
潺々(せんせん)と音を奏でる春の渓(たに)
（ 長嶺勇 ）
（ Nagamine Isamu ）
605.
おのづからかすみまとへり翁草(おきなぐさ)
（ 堀口星眠 ）
（ Horiguchi Seimin ）
606.
如月(きさらぎ)やバレンタインの余りチョコ
（ 山田六甲 ）
（ Yamada Rokkou ）
607.
近道をする節分の豆を踏み
（ 山崎祐子 ）
（ Yamazaki Yuuko ）
608.
鶯(うぐいす)を鶯笛としてみたし
（ 西村麒麟 ）
（ Nishimura Kirin ）
609.
好物も寡黙に食(は)みて受驗の子
（ 小阪喜美子 ）
（ Kosaka Kimiko ）
610.
水滴の凍るふゆべぞ梅にほふ
（ 水原秋桜子［水原秋櫻子］ ）
（ Mizuhara Shuuoushi ）
611.
朧月(おぼろづき)一足(ひとあし)づゝもわかれかな
（ 向井去来 ）
（ Mukai Kyorai ）
612.
ものの芽のすつくと決すべきや否(いな)
（ 鷹羽狩行 ）
（ Takaha Shugyou ）
613.
手をはなつ中に落ちけりおぼろ月
（ 向井去来 ）
（ Mukai Kyorai ）
614.
羽音(はおと)せる霞の国に住(すま)ひをり
（ 村越化石 ）
（ Murakoshi Kaseki ）
615.
正直なおたまじやくしは浮いてくる
（ 市堀玉宗 ）
（ Ichibori Gyokushuu ）
616.
山櫻散るを惜しめとひらひらと
（ 京極杞陽 ）
（ Kyougoku Kiyou ）
617.
語尾を引くアーメン椿落ちさうに
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
618.
たんぽぽの絮(わた)ことごとく次の世へ
（ 市川葉 ）
（ Ichikawa You ）
619.
ふと鳴いて白昼やさし野の蛙
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
620.
春愁や何か忘れてゐさうな日
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
621.
だれにでも見える高さの春の鳶(とび)
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
622.
亀鳴くやひとりとなれば意地も抜け
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
623.
空をゆくひとかたまりの花吹雪
（ 高野素十 ）
（ Takano Sujuu ）
624.
七人と犬一匹のさくらかな
（ 小西昭夫 ）
（ Konishi Akio ）
625.
春の夜の秋より長し草の庵
（ 川端茅舎 ）
（ Kawabata Bousha ）
626.
安宿とあなどるなかれ桜鯛
（ 森田峠 ）
（ Morita Touge ）
627.
大空に拾はれてゆく春の雲
（ 河内静魚 ）
（ Kawauchi Shizuo ）
628.
からからと鍋に蜆(しじみ)をうつしけり
（ 松根東洋城 ）
（ Matsune Touyoujou ）
629.
何事ぞ花見る人の長刀(なががたな)
（ 向井去来 ）
（ Mukai Kyorai ）
630.
無人境うぐひす庭を歩りきけり
（ 黒柳召波 ）
（ Kuroyanagi Shouha ）

631.
朝日といふ光の先へ接木(つぎき)せり
（ 工藤進 ）
（ Kudou Susumu ）
632.
咲いて色揃はぬこともチューリップ
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
633.
鉄塔があやつる蝶の数知れず
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）
634.
春風の日本に源氏物語
（ 京極杞陽 ）
（ Kyougoku Kiyou ）
635.
淋しさや昔の家の古き春
（ 松根東洋城 ）
（ Matsune Touyoujou ）
636.
山焼の明りに下る夜舟哉(かな)
（ 小林一茶 ）
（ Kobayashi Issa ）
637.
雲雀(ひばり)・土龍(もぐら)罪とおもはゞ告げて来(こ)よ
（ 川口重美 ）
（ Kawaguchi Shigemi ）
638.
ぬかるみに来て恋猫に見入らるる
（ 太田鴻村 ）
（ Oota Kouson ）
639.
春雨や小磯の小貝ぬるるほど
（ 与謝蕪村 ）
（ Yosano Buson ）
640.
汲鮎(くみあゆ)や青山(せいざん)高く水長し
（ 黒柳召波 ）
（ Kuroyanagi Shouha ）

641.
草の戸も住み替はる代ぞ雛(ひな)の家
（ 松尾芭蕉 ）
（ Matsuo Bashou ）
642.
永き日も囀(さえず)り足らぬひばり哉(かな)
（ 松尾芭蕉 ）
（ Matsuo Bashou ）
643.
百姓の血筋の吾(われ)に麦青む
（ 高野素十 ）
（ Takano Sujuu ）
644.
あたゝかや笑つて写真撮ることに
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
645.
風光る丘の話をしてゐたる
（ 宮本佳世乃 ）
（ Miyamoto Kayano ）
646.
直土(ひたつち)の色改(あらたま)り蟻の変
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）
647.
寝て食べて花を見ること今日大事
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
648.
石に無く岩には雪の残りたる
（ 中村草田男 ）
（ Nakamura Kusatao ）
649.
田の神に供へられある若菜かな
（ 山田六甲 ）
（ Yamada Rokkou ）
650.
春服や親達にのみ故郷あり
（ 中村草田男 ）
（ Nakamura Kusatao ）

651.
青き踏むより踏みたきは川の艶(つや)
（ 齋藤玄 ）
（ Saitou Gen ）
652.
春雨(はるさめ)やくらげはものの淋しき味
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
653.
春の山たたいてここへ坐れよと
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）
654.
にぎやかな音の立ちけり蜆汁
（ 大住日呂姿 ）
（ Oosumi Hiroshi ）
655.
すゞめ子や書写の机のほとり迄
（ 黒柳召波 ）
（ Kuroyanagi Shouha ）
656.
いくすべり骨おる岸のかはづ哉(かな)
（ 向井去来 ）
（ Mukai Kyorai ）
657.
他界とは桜に透ける向う側
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
658.
春雷や三代にして芸は成る
（ 中村草田男 ）
（ Nakamura Kusatao ）
659.
おむすびがころがりたがる春の山
（ 有澤榠りん ）
（ Arisawa Karin ）
660.
とらへたる蝶の足(あ)がきのにほひかな
（ 中村草田男 ）
（ Nakamura Kusatao ）

661.
一日余さず使ひわらび餅
（ 神蔵器 ）
（ Kamikura Utsuwa ）
662.
ひとを待つ間に猫の子に名を授け
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
663.
たんぽゝもけふ(きょう)白頭(はくとう)に暮の春
（ 黒柳召波 ）
（ Kuroyanagi Shouha ）
664.
馬駈けて菜の花の黄を引伸ばす
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
665.
春秋冬(はるあきふゆ)冬を百日桜かな
（ 松根東洋城 ）
（ Matsune Touyoujou ）
666.
野の鳩の塔掠(かす)めしよ風光る
（ 五十崎朗 ）
（ Ikazaki Rou ）
667.
老いらくの恋しづかなり桜漬
（ 米田双葉子 ）
（ Yoneda Souyoushi ）
668.
山やくや舟の片帆の片あかり
（ 久芳水颯 ）
669.
足踏の好きな仔馬でありにけり
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）
670.
春宵や人形うごく違ひ棚
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）

671.
折鶴をひらけばいちまいの朧(おぼろ)
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
672.
さへづりのだんだん吾(われ)を容(い)れにけり
（ 石田郷子 ）
（ Ishida Kyouko ）
673.
菜の花の一本でいる明るさよ
（ 折笠美秋 ）
（ Orisaka Bishuu ）
674.
壁白くああ大試験とはに済む
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）
675.
チューリップ花びら外れかけてをり
（ 波多野爽波 ）
（ Hatano Souha ）
676.
風切つてくるつばくろよお帰りなさい
（ 大木あまり ）
（ Ooki Amari ）
677.
春一番踊子草の乱舞あり
（ 伊藤一枝 ）
678.
春の風苦しむ鶏(とり)を抱きにゆく
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
679.
梅一輪　一輪ずつの暖かさ
（ 作者不詳 ）
680.
春の夜や土につこりと寂しけれ
（ 永田耕衣 ）
（ Nagata Koui ）

681.
ねむれぬ夜端々(はしばし)ひかる梅の枝
（ 佐藤鬼房 ）
（ Satou Onifusa ）
682.
声消えぬ空の雲雀(ひばり)は寒きかな
（ 太田鴻村 ）
（ Oota Kouson ）
683.
直面(ひためん)も仮面におなじ火のまわり
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
684.
喜寿といふ春風にをる齢(よわい)かな
（ 富安風生 ）
（ Tomiyasu Fuusei ）
685.
春睡(しゅんすい)の神にあづけし命かな
（ 徳永夏川女 ）
（ Tokunaga Kasenjo ）
686.
入学のつやつや光るランドセル
（ 西川寿賀子 ）
（ Nishikawa Sugako ）
687.
吾(あ)も春の野に下り立てば紫に
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）
688.
野遊びと世は異ならず白遍路
（ 森澄雄 ）
（ Mori Sumio ）
689.
日もすがら木(き)の芽促す雨なりし
（ 長嶺勇 ）
（ Nagamine Isamu ）
690.
雷のとどろとどろと蟻の変
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）

691.
けふできて光り一日苗代田(なわしろだ)
（ 森澄雄 ）
（ Mori Sumio ）
692.
春立つや醪(もろみ)に櫂(かい)の夢うつつ
（ 宮坂静生 ）
（ Miyasaka Shizuo ）
693.
子猫の名いまだ決まらず雨止まず
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
694.
ひとすぢの柳絮(りゅうじょ)の流れ町を行く
（ 前田普羅 ）
（ Maeda Fura ）
695.
残りゐて早く散りたき花ばかり
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
696.
燈台の遠(とお)の南のゆふがすみ
（ 下村槐太 ）
（ Shimomura Kaita ）
697.
シャボン玉飛び出す命限り無し
（ 安井浩司 ）
（ Yasui Kouji ）
698.
新しき足袋(たび)も足駄(あしだ)も春の泥
（ 久保より江 ）
（ Kubo Yorie ）
699.
生き残りたる人の影春障子
（ 深見けん二 ）
（ Fukami Kenji ）
700.
菜の花や月は東に日は西に
（ 与謝蕪村 ）
（ Yosano Buson ）

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