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1001.
花満ちて死者に無限の夜のありぬ
（ 篠崎央子 ）
（ Shinozaki Hisako ）
1002.
背伸びして絮(わた)追う心地　たんぽぽ野
（ 伊丹啓子 ）
（ Itami Keiko ）
1003.
夕蛙(ゆうかわず)をしへられたる道あらず
（ 相馬黄枝 ）
（ Souma Koushi ）
1004.
つばな野や兎のごとく君待つも
（ 小池文子 ）
（ Koike Fumiko ）
1005.
踏青ややまのべのみちここにあり
（ 相馬黄枝 ）
（ Souma Koushi ）
1006.
傘を流るゝ朧(おぼろ)や水を左右(さう)に行く
（ 安斎桜かい子 ）
（ Anzai Oukaishi ）
1007.
泊むるなる友に目刺の酒尽きず
（ 森川暁水 ）
（ Morikawa Gyousuru ）
1008.
春風を飲み干すやうに笑ひけり
（ 篠崎央子 ）
（ Shinozaki Hisako ）
1009.
春嵐埠頭(ふとう)突端より追へず
（ 小池文子 ）
（ Koike Fumiko ）
1010.
朧夜(おぼろよ)や魔女伝説を疑わず
（ 高尾秀四郎 ）
（ Takao Hideshirou ）
1011.
よき衣を着て門に出る春寒し
（ 安藤橡面坊 ）
（ Andou Tochimenbou ）
1012.
手を洗ひをえて思ひぬ春めくと
（ 相馬黄枝 ）
（ Souma Koushi ）
1013.
焦したる目刺にめしのよごれけり
（ 森川暁水 ）
（ Morikawa Gyousuru ）
1014.
虚名より無名ゆたかに梅の花
（ 加藤郁乎 ）
（ Katou Ikuya ）
1015.
薄氷(うすらい)へわが影ゆきて溺死せり
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1016.
猫の恋声まねをれば切なくなる
（ 加藤楸邨 ）
（ Katou Shuuson ）
1017.
物思ふ春あけぼのの明るさに
（ 高木晴子 ）
（ Takagi Haruko ）
1018.
春愁の巻貝に耳あてて見る
（ 秋山朔太郎 ）
（ Akiyama Sakutarou ）
1019.
屋根の上に登りし頃の春の雲
（ 高倉和子 ）
（ Takakura Kazuko ）
1020.
さういえばわれに子がをり春のくれ
（ 有澤榠りん ）
（ Arisawa Karin ）
1021.
裏がへる亀思ふべし鳴けるなり
（ 石川桂郎 ）
（ Ishikawa Keirou ）
1022.
朧より朧へうつし世の列車
（ 吉本宣子 ）
（ Yoshimoto Nobuko ）
1023.
水の譜の楽(がく)となりゆく春の川
（ 工藤進 ）
（ Kudou Susumu ）
1024.
朧にて寝ることさへやなつかしき
（ 森澄雄 ）
（ Mori Sumio ）
1025.
春愁の世にかほばせのほそくあり
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1026.
戦塵(せんじん)も混じりてゐたる霾(よな)ぐもり
（ 工藤進 ）
（ Kudou Susumu ）
1027.
春浪に女は尾鰭(おひれ)のなき歎き
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1028.
昼蛙(かわず)どの畦(あぜ)のどこ曲(まが)ろうか
（ 石川桂郎 ）
（ Ishikawa Keirou ）
1029.
藤垂れてこの世のものの老婆佇(た)つ
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1030.
死もたのし二ン月(がつ)穹(そら)の蒼き日は
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）

1031.
梅見えて来て美しき距離となる
（ 高木石子 ）
（ Takaishi Sekishi ）
1032.
鳥の世のやうにふらここ揺らしゐる
（ 澤本三乗 ）
（ Sawamoto Sanjou ）
1033.
尋ねたきことが一輪梅ひらく
（ 深沢暁子 ）
（ Fukazawa Akiko ）
1034.
をみな子を生ままく欲れり 花のもと
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1035.
櫻咲き吾が生ままくの子をおもふ
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1036.
恋猫の皿舐めてすぐ鳴きにゆく
（ 加藤楸邨 ）
（ Katou Shuuson ）
1037.
的はあなた矢に花咲いてしまいけり
（ 池田澄子 ）
（ Ikeda Sumiko ）
1038.
流れたきかたちに流れ春の水
（ 澤本三乗 ）
（ Sawamoto Sanjou ）
1039.
血の足らぬ日なり椿を見に行かむ
（ 篠崎央子 ）
（ Shinozaki Hisako ）
1040.
人の無き世の音の無き歯朶(しだ)若葉
（ 小池文子 ）
（ Koike Fumiko ）

1041.
平凡なをんなに咲きぬ茱萸(ぐみ)の花
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1042.
春菜束(はるなたば)購(あがな)ふ裏返しうらがえし
（ 岡本眸 ）
（ Okamoto Hitomi ）
1043.
うろくづにゆふべがくるよひばりにも
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
1044.
幻をかたちにすれば白魚に
（ 岩淵喜代子 ）
（ Iwabuchi Kiyoko ）
1045.
父母在(ま)さねば故里(ふるさと)おぼろ　朧月
（ 伊丹啓子 ）
（ Itami Keiko ）
1046.
何もかも上手くいきたる春の夢
（ 高倉和子 ）
（ Takakura Kazuko ）
1047.
似て来り亡き子の顔と雛のかほ
（ 大串若竹 ）
（ Ookushi Wakatake ）
1048.
ぬぎすてし人の温(ぬく)みや花衣(はなごろも)
（ 飯田蛇笏 ）
（ Iida Dakotsu ）
1049.
哀れなる痩地(やせち)の麦や花の道
（ 黒柳召波 ）
（ Kuroyanagi Shouha ）
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