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[ 名言 ]
地上の歓喜は、畢竟(ひっきょう)落花の夢にひとしい束の間のことである。

[ 出典 ]
九条武子[くじょう・たけこ]
(教育者、京都女子学園・京都女子大学設立者、歌人、社会運動活動家、仏教婦人会創設者、1887〜1928)
自著『無憂華』
「荊棘の野」

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〈全文〉
陽春の太陽は、無数の光の玉をまろばして、地上に乱舞させている。
天と地との祈誓をかけた、春という大きな恵みに、地上のもの悉(ことごと)くが、かがやかしい歓びに満たされている。

しかし地上には限りがある。
生あるものは、やがて香も色も褪(あ)せ、夢から覚める日が来よう。
歓びののちに、悩みのつづく地上に在(あ)っては、ただ愁いのみが無限であるかのようである。

地上の歓喜は、畢竟(ひっきょう)落花の夢にひとしい束の間のことである。
眩惑の衣を脱ぎ棄てて、裸のままの人間に立ちかえったときは、更に踏み出すべき道がはっきりとみつめられる。
そこには荒漠たる荊棘(いばら)の野が、辺際なくひろがっている。


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