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701.
一枚の餅のごとくに雪残る
（ 川端茅舎 ）
（ Kawabata Bousha ）
702.
日向ぼこもまれて亡者(もうじゃ)はみ出しぬ
（ 八田木枯 ）
（ Hatta Kogarashi ）
703.
石蕗(つわ)咲いていそぐとみえぬ帆のいそぎ
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
704.
奥へ奥へ夕日を送り山眠る
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
705.
旅に病んで夢は枯野をかけ廻(めぐ)る
（ 松尾芭蕉 ）
（ Matsuo Bashou ）
706.
括(くく)られて咲くものばかり冬の庭
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
707.
手が冷(つめ)た頬に当てれば頬冷た
（ 波多野爽波 ）
（ Hatano Souha ）
708.
雪深く心はづみて唯(ただ)歩く
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
709.
耳とほき浮世の事や冬籠(ふゆごもり)
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
710.
鶴の来るために大空あけて待つ
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
711.
氷結の上上雪の降り積もる
（ 山口誓子 ）
（ Yamaguchi Seishi ）
712.
冬草や夢見るために世を去らん
（ 大木あまり ）
（ Ooki Amari ）
713.
ほのかなるもの身をめぐる屠蘇の酔
（ 那須乙郎 ）
（ Nasu Otsurou ）
714.
軽やかに死を告げに来よ春の雪
（ 大木あまり ）
（ Ooki Amari ）
715.
冬一日火に親しみて暮れにけり
（ 石川啄木 ）
（ Ishikawa Takuboku ）
716.
生きがひを問はれてさてと懐手(ふところで)
（ 荻原正三 ）
（ Hagiwara Shouzou ）
717.
冬空や猫塀づたひどこへもゆける
（ 波多野爽波 ）
（ Hatano Souha ）
718.
マントの雪は悲し妻には払はせず
（ 八田木枯 ）
（ Hatta Kogarashi ）
719.
返り咲くたんぽぽに茎なかりけり
（ 福神規子 ）
（ Fukujin Noriko ）
720.
暮れてゆく年なり飯を食べてゐる
（ 太田鴻村 ）
（ Oota Kouson ）
721.
行(ゆく)としや連(つれ)たつものは何と何
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
722.
冬の日や河床(かわどこ)にまがふ道の澄み
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
723.
洗上げ白菜も妻もかゞやけり
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
724.
歳晩の月の明(あか)さを身にまとひ
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
725.
そっと来る物に気づくや竹の雪
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
726.
いたづらに石のみ立てり冬の庭
（ 五升庵蝶夢 ）
（ Goshouan Choumu ）
727.
冬の蜂脚長く垂れ陽に酔へり
（ 内藤吐天 ）
（ Naitou Toten ）
728.
冬日(ふゆび)淡くまだ空谷に届かずて
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
729.
数へ日や数へなほして誤たず
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
730.
日向ぼこ神の集ひも日向ならむ
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）

731.
あすしらぬこともをかしや雪つもる
（ 飯田蛇笏 ）
（ Iida Dakotsu ）
732.
雪やんで月いざよへる雲間かな
（ 飯田蛇笏 ）
（ Iida Dakotsu ）
733.
冬の鳥きく日だまりの少しあり
（ 加藤喜代子 ）
（ Katou Kiyoko ）
734.
雪まみれ皆んな地霊(ちれい)になつてゐる
（ 泉風信子 ）
（ Izumi Fuushinshi ）
735.
鉢棚を叩く硬さや寒の雨
（ 竹下しづの女 ）
（ Takeshita Sizunojo ）
736.
数へ日(かぞえび)も数へずなりぬ何もせず
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
737.
日当りぬ水鳥そこへ浮き出でぬ
（ 大橋櫻坡子［大橋桜坡子］ ）
（ Oohashi Ouhashi ）
738.
冬蜂(ふゆばち)の胸に手足を集め死す
（ 野見山朱鳥 ）
（ Nomiyama Asuka ）
739.
北方に北斗つらねし焚火かな
（ 原石鼎 ）
（ Hara Sekitei ）
740.
襟巻となりて獣のまた集ふ
（ 野口る理 ）

741.
又時雨(しぐれ)雲を育てて空倦(う)まず
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
742.
東京は寒し青空なればなお
（ 高野ムツオ ）
743.
河豚(ふぐ)刺身何しんみりとさすものぞ
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
744.
ともかくも風にまかせてかれ尾花
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
745.
梟さびし人の如くに瞑るとき
（ 原石鼎 ）
（ Hara Sekitei ）
746.
物書く手あたためくれぬ冬日差(ふゆひざし)
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
747.
息白く長くわが生確かむかな
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
748.
旗のごとなびく冬日をふと見たり
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
749.
ふところ手(で)こころ見られしごとほどく
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
750.
冬薔薇(ふゆそうび)咲き切る力秘めながら
（ 今橋眞理子 ）
（ Imahashi Mariko ）

751.
冬あたたか五十のわれに母在れば
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
752.
冬水や古瀬かはらずひとすぢに
（ 飯田蛇笏 ）
（ Iida Dakotsu ）
753.
夫と子をふつつり忘れ懐手(ふところで)
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
754.
遠火事に深き酔ひ寝の起さるる
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
755.
魚屋が水捨ててをり遠き火事
（ 大橋俊彦 ）
（ Oohashi Toshihiko ）
756.
冬眠の土中の蟲(むし)につながり寝る
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
757.
日向ぼこ佛掌(ぶっしょう)の上にゐる思ひ
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
758.
大晦日は昔も今もさむき夜ぞ
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
759.
池二つ涸(か)れてその色異(こと)なれる
（ 田中裕明 ）
（ Tanaka Hiroaki ）
760.
湯たんぽに足より眠くなつてゆく
（ 今橋眞理子 ）
（ Imahashi Mariko ）

761.
めつむれば山河きらめく冬籠(ふゆごもり)
（ 大野林火 ）
762.
雪女男運なく消えにけり
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
763.
父祖の地に闇のしづまる大晦日
（ 飯田蛇笏 ）
（ Iida Dakotsu ）
764.
寒風に吹きしぼらるる思ひかな
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）
765.
雪の日や雪のせりふを口ずさむ
（ 初代 中村吉右衛門 ）
（ Nakamura Kichiemon 1st ）
766.
短日(たんじつ)をけふは上手に使ひけり
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
767.
冬籠(ふゆごもり)心を籠(こ)めて手紙書く
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
768.
どこやらが冬どこやらが春の雲
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
769.
年惜しむ心のなかに椅子置いて
（ 河内静魚 ）
（ Kawauchi Shizuo ）
770.
土堤(どて)を外れ枯野(かれの)の犬となりゆけり
（ 山口誓子 ）
（ Yamaguchi Seishi ）

771.
日向ぼこ神に抱(だ)かれているごとく
（ 仲畑貴志 ）
（ Nakahata Takashi ）
772.
他所者(よそもの)のきれいな布団干してある
（ 行方克巳 ）
（ Namekata Katsumi ）
773.
霜枯やひめごともちて海に対(むか)ふ
（ 角川源義 ）
（ Kadokawa Genyoshi ）
774.
冬蜂(ふゆばち)の死ぬ気全くなかりけり
（ 原田喬 ）
775.
明日会へる今日よく晴れて冬の空
（ 小野房子 ）
（ Ono Fusako ）
776.
山のぼるこころ枯野にへだたりぬ
（ 太田鴻村 ）
（ Oota Kouson ）
777.
白鳥の白よみがへる夜明けかな
（ 大串章 ）
（ Oogushi Akira ）
778.
柔かな夜につゝまれて初冬(しょとう)かな
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）
779.
冬空に大樹の梢(こずえ)朽ちてなし
（ 高浜虚子 ）
（ Takahama Kyoshi ）
780.
雪原(せつげん)の黒きが水の湧くところ
（ 三上冬華 ）

781.
雪に来て美事(みごと)な鳥のだまり居る
（ 原石鼎 ）
（ Hara Sekitei ）
782.
いのち長きより全(まった)きをねがふ寒(かん)
（ 大野林火 ）
（ Oono Rinka ）
783.
こゝろえて緒口とる雪の宴(うたげ)かな
（ 飯田蛇笏 ）
（ Iida Dakotsu ）
784.
日向ぼこ母の隣にゐるごとし
（ 高倉和子 ）
（ Takakura Kazuko ）
785.
孤独とは人の持物年の空
（ 河内静魚 ）
（ Kawauchi Shizuo ）
786.
雪が降り地図にない道あらわれる
（ 穴井太 ）
（ Anai Futoshi ）
787.
人ほどに寂しがらずに笹鳴ける
（ 八田木枯 ）
（ Hatta Kogarashi ）
788.
ひろやかなところへ年の去らんとす
（ 河内静魚 ）
（ Kawauchi Shizuo ）
789.
弱き身の冬服の肩とがりたる
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）
790.
神々の心づくしの雪の山
（ 9代目 松本幸四郎 ）
（ Matsumoto Koushirou 9th ）

791.
冥れば死の影まざと冬籠(ふゆごもり)
（ 上林白草居 ）
（ Kanbayashi Soukyo ）
792.
返り花(ばな)きらりと人を引きとどめ
（ 皆吉爽雨 ）
（ Minayoshi Souu ）
793.
降る雪や地上のすべてゆるされたり
（ 野見山朱鳥 ）
（ Nomiyama Asuka ）
794.
近づけば歩み去る人返り花
（ 池内友次郎 ）
（ Ikenouchi Tomojirou ）
795.
よろこびはかなしみに似し冬牡丹(ふゆぼたん)
（ 山口青邨 ）
（ Yamaguchi Seison ）
796.
人も子をなせり天地も雪ふれり
（ 野見山朱鳥 ）
（ Nomiyama Asuka ）
797.
めいめいに優しきことを言うて冬
（ 大木あまり ）
（ Ooki Amari ）
798.
枯山(かれやま)を越え枯山に入りゆく
（ 篠原梵 ）
（ Shinohara Bon ）
799.
躓(つまず)きし石生きてとぶ枯野かな
（ 川端茅舎 ）
（ Kawabata Bousha ）
800.
初冬(はつふゆ)の　徐々と来　木々に人に町に
（ 星野立子 ）
（ Hoshino Tatsuko ）

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