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801.
母逝くや雪泣く道は骨の音
（ 金原亭世之介 ）
（ Kingentei Yonosuke ）
802.
山並みが遠吠え色に暮れる冬
（ 福田若之 ）
（ Fukuda Wakayuki ）
803.
帰り花つけてかへつて淋しき枝
（ 後藤比奈夫 ）
（ Gotou Hinao ）
804.
鯛焼の溌刺(はつらつ)たるを咬み得たり
（ 相生垣瓜人 ）
（ Aioigaki Kajin ）
805.
古書街に肩叩かるる歳の暮
（ 皆川盤水 ）
（ Minakawa Bansui ）
806.
逢ひたしの文にしぐるる日を化粧ふ
（ 保坂リエ ）
（ Hosaka Rie ）
807.
志(し)と詞と死と日向ぼこりの中なるや
（ 折笠美秋 ）
（ Orisaka Bishuu ）
808.
幼な雪自分を夢と思い消ゆ
（ 折笠美秋 ）
（ Orisaka Bishuu ）
809.
白菜一山いつしか仇のように割る
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
810.
お大事にと言うて言われて寒の入
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
811.
回遊魚は海の歯車十二月
（ 篠崎央子 ）
（ Shinozaki Hisako ）
812.
茂るさへ淋しきものを枯葎(かれむぐら)
（ 魚貫 ）
813.
独りとはなんと賑やか寒北斗
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
814.
灯のとどく雪に降る音ありにけり
（ 相馬黄枝 ）
（ Souma Koushi ）
815.
おとろへや榾(ほた)折りかねる膝頭
（ 小林一茶 ）
（ Kobayashi Issa ）
816.
一身を大事とおもう雪の朝
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
817.
春待つや時計鳴るたび時計見て
（ 相馬黄枝 ）
（ Souma Koushi ）
818.
吹雪く夜や甦るもの過去ばかり
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
819.
息白く我より長く生きろと言ふ
（ 藤井あかり ）
（ Fujii Akari ）
820.
教室の寒く生徒ら笑はざり
（ 森田峠 ）
（ Morita Touge ）
821.
湯帰りや燈(ひ)ともしころの雪もよひ
（ 永井荷風 ）
（ Nagai Kafuu ）
822.
無くなりてをりぬ暖かかりし場所
（ 藤井あかり ）
（ Fujii Akari ）
823.
冬に入(い)る己れ励ます割烹着(かっぽうぎ)
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
824.
雪しづか碁盤に黒の勝ちてあり
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
825.
怒りの詩沼は氷りて厚さ増す
（ 佐藤鬼房 ）
（ Satou Onifusa ）
826.
わが山河いまひたすらに枯れゆくか
（ 相馬遷子 ）
（ Souma Senshi ）
827.
ふところに手紙かくして日向ぼこ
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
828.
除夜の湯に肌触れあへり生くるべし
（ 村越化石 ）
（ Murakoshi Kaseki ）
829.
冬麗(とうれい)の微塵(みじん)となりて去らんとす
（ 相馬遷子 ）
（ Souma Senshi ）
830.
道遥かに荒海に沿ふ寒さかな
（ 大須賀乙字 ）
（ Oosuga Otsuji ）

831.
わづかなる煮炊(にたき)に汚れあたたかし
（ 岡本眸 ）
（ Okamoto Hitomi ）
832.
寒鯉(かんごい)を雲のごとくに食はず飼ふ
（ 森澄雄 ）
（ Mori Sumio ）
833.
裸木(はだかぎ)の側にしばらく居てやりぬ
（ 村越化石 ）
（ Murakoshi Kaseki ）
834.
少しづつかじるせんべい冬ごもり
（ 森田峠 ）
（ Morita Touge ）
835.
小春日や杖一本の旅ごころ
（ 村越化石 ）
（ Murakoshi Kaseki ）
836.
年の夜やもの枯れやまぬ風の音
（ 渡辺水巴 ）
（ Watanabe Suiha ）
837.
日面(ひおもて)のだんだん日陰笹子(ささご)鳴く
（ 深見けん二 ）
（ Fukami Kenji ）
838.
まな板に置けば匂ふや寒の芹(せり)
（ 大峯あきら ）
（ Oomine Akira ）
839.
マフラーを捲き首筋を立て直す
（ 瀧澤宏司 ）
（ Takizawa Hiroshi ）
840.
冬の朝無色透明より始む
（ 半澤佐緒里 ）
（ Hanzawa Saori ）

841.
みちのくは底知れぬ国大熊(おやぢ)生(い)く
（ 佐藤鬼房 ）
（ Satou Onifusa ）
842.
冬山中に天窓ありし甘美かな
（ 澁谷道 ）
（ Shibuya Michi ）
843.
目つむればまぶたにぬくき冬日(ふゆび)かな
（ 中村汀女 ）
（ Nakamura Teijo ）
844.
我が祈り天に届くや冬日燦(さん)
（ 薫風士 ）
845.
枯芒(かれすすき)とて一山をゆるがしぬ
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
846.
へろへろとワンタンすするクリスマス
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
847.
水仙の丈(たけ)をすとんと生けにけり
（ 福神規子 ）
（ Fukujin Noriko ）
848.
生きてゐるものに忌日(きにち)や神無月(かんなづき)
（ 今橋眞理子 ）
（ Imahashi Mariko ）
849.
翔(た)つ力砂に刻みて冬鴎(ふゆかもめ)
（ 野村邦翆 ）
850.
若き日の足音(あおと)帰らず夜の落葉
（ 堀口星眠 ）
（ Horiguchi Seimin ）

851.
夢に来し父に抱かれ寒夜(かんや)なり
（ 堀口星眠 ）
（ Horiguchi Seimin ）
852.
鉄筆をしびれて放す冬の暮
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
853.
座持ちよき一人失ひ年忘れ
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
854.
火事遠きこと確かめて寝ることに
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
855.
子とみれば雪ゆたかなり童話劇
（ 能村登四郎 ）
（ Nomura Toshirou ）
856.
大掃除　父危篤だと　メール入れ（ver.0
（ 作者不詳 ）
857.
火事現場見知らぬ人と話する
（ 秋千晴 ）
858.
おされ合ふてころぶ間もなしとしの市
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
859.
落葉(おちば)焚(た)く悔いて返らぬことを悔い
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
860.
凍(い)つる星見上げ地上に生きてをり
（ 今橋眞理子 ）
（ Imahashi Mariko ）

861.
旅に逢ふ雪にさすらふ心あり
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
862.
日向ぼこ旅にあること忘れつつ
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
863.
何時(いつ)雪になりしや夜半(やわ)の音絶えて
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
864.
散らかしてよい部屋一つ冬休み
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
865.
又同じものが残りしおでんかな
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
866.
焚火(たきび)せる子らは目敏(ざと)く教師を見
（ 森田峠 ）
（ Morita Touge ）
867.
謙虚なる十一月を愛すなり
（ 遠藤梧逸 ）
868.
尺雪に畝(うね)のままなる起伏あり
（ 瀧澤宏司 ）
（ Takizawa Hiroshi ）
869.
椅子と人友の如くに日向ぼこ
（ 岸本尚毅 ）
（ Kishimoto Naoki ）
870.
忘れゐし寒さといふはとつぜんに
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）

871.
短日(たんじつ)の門辺(かどべ)に惜む別れかな
（ 服部珠子 ）
（ Hattori Tamako ）
872.
短日(たんじつ)や下校促すチャイム鳴り
（ 服部珠子 ）
（ Hattori Tamako ）
873.
詫び状は梃(てこ)でも書かず寒椿(かんつばき)
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）
874.
土地人(とちびと)の雪の装ひ簡単に
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
875.
顔寒し電柱は電柱として立てり
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
876.
ころぶ人を笑ふてころぶ雪見哉(かな)
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
877.
プール涸れ屋上の如し北風吹き
（ 秋元不死男 ）
（ Akimoto Fujio ）
878.
白樺のしゞまに堪へず雪降るか　
（ 堀口星眠 ）
（ Horiguchi Seimin ）
879.
短夜(みじかよ)の瀬に降る花はみな白し
（ 堀口星眠 ）
（ Horiguchi Seimin ）
880.
つま先に石さからひし枯野かな
（ 鈴木真砂女 ）
（ Suzuki Masajo ）

881.
あそび尽しことしも翌のない日まで
（ 加賀千代女 ）
（ Kagano Chiyojo ）
882.
年忘れ最も老を忘れけり
（ 富安風生 ）
（ Tomiyasu Fuusei ）
883.
雪降つてゐると聞きとび起きし子よ
（ 稲畑汀子 ）
（ Inahata Teiko ）
884.
生きたかり埋火(うずみび)割れば濃むらさき
（ 川口重美 ）
（ Kawaguchi Shigemi ）
885.
年の瀬や目付きの悪しき魚を提げ
（ 篠崎央子 ）
（ Shinozaki Hisako ）
886.
林枯れ白雲われを脅(おびやか)す
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
887.
わびしさのいのち寄せ合ひ侘助よ
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
888.
振つて来た雀をさむい頭にしまふ
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
889.
枯蔓(かれづる)は焼くべし焼いてしまふべし
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
890.
おそろしき骨の出て来し鮟鱇鍋
（ 高木良多 ）
（ Takagi Ryouta ）

891.
枯色を被(き)て枯色にまぎれ込む
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
892.
悔恨の羽毛となりて浮寝せり
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
893.
患(わずら)わず冬あたたかな日に逝(ゆ)けり
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
894.
日向ぼこ何あたためむかなしみも
（ 森澄雄 ）
（ Mori Sumio ）
895.
黒マスク　烏天狗になれさうな
（ 伊丹啓子 ）
（ Itami Keiko ）
896.
田楽に酔うてさびしき男かな
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
897.
この世ならではの相聞(そうもん)雪明り
（ 宇多喜代子 ）
（ Uda Kiyoko ）
898.
おちつきのある冬鵙(ふゆもず)となりにけり
（ 阿波野青畝 ）
（ Awano Seiho ）
899.
茶畑の土にまぎれぬ寒雀(かんすずめ)
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）
900.
冬に入る見分け難きは枯木と死木
（ 三橋鷹女 ）
（ Mitsuhashi Takajo ）

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