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文学と武術とは、甚だ縁の遠いもので、青白く、細長い顔こそ文学者に似つかわしいと思っているらしい人もあるようだが、とんでもない。
柔道七段にでもなって見なさい。 諸君の作品の悪口を言うものは、ひとりも無くなります。 あとで殴られる事を恐れて悪口を言わないのではない。 諸君の作品が立派だからである。 太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948) 『花吹雪』 黄村先生のセリフ 《 文章の書き方 》
〈全文〉
何か自分に根本的な欠陥があるのではないか、と沈思の末、はたと膝を打った。 武術! これであります。 私は男子の最も大事な修行を忘れていたのでした。 男子は、武術の他には何も要らない。 男子の一生は戦場です。 諸君が、どのような仕事をなさるにしても、腕に覚えがなくてはかなわぬ。 何がおかしい。 私は、真面目に言っているのです。 腕力の弱い男子は、永遠に世の敗北者です。 __ Link __ 人と対談しても、壇上にて憂国の熱弁を振うにしても、また酒の店でひとりで酒を飲んでいる時でも、腕に覚えの無い男は、どこやら落ちつかず、いやらしい眼つきをして、人に不快の念を生じさせ、蔑視(べっし)せられてしまうものです。 __ Link __ 文学の場合だって同じ事だ。 (ぎょろりと速記者を、にらむのである。)文学と武術とは、甚(はなは)だ縁の遠いもので、青白く、細長い顔こそ文学者に似つかわしいと思っているらしい人もあるようだが、とんでもない。 柔道七段にでもなって見なさい。 諸君の作品の悪口を言うものは、ひとりも無くなります。 あとで殴られる事を恐れて悪口を言わないのではない。 諸君の作品が立派だからである。 __ Link __ そこにいらっしゃる先生(と、またもや、ぐいと速記者のほうを顎でしゃくって、)その先生の作品などは、時たま新聞の文芸欄で、愚痴(ぐち)といやみだけじゃないか、と嘲笑(ちょうしょう)せられているようで、お気の毒に思っていますが、それもまたやむを得ない事で、 今まで三十何年間、武術を怠り、精神に確固たる自信が無く、きょうは左あすは右、ふらりふらりと千鳥足の生活から、どんな文芸が生まれるか凡(およ)そわかり切っている事です。 __ Link __ いまからでも柔道あるいは剣道の道場へ通うようにするがいい。 本当に笑いごとではないのです。 明治大正を通じて第一の文豪は誰か。 おそらくは鴎外、森林太郎博士であろうと思う。 あのひとなどは、さすがに武術のたしなみがあったので、その文章にも凜乎(りんこ)たる気韻(きいん)がありましたね。 あの人は五十ちかくなって軍医総監という重職にあった頃でも、宴会などに於いて無礼者に対しては敢然と腕力をふるったものだ。
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( ゲーム『君が望む永遠』 )
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( 荒木貞一 )
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( グル・ルー )
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( 『「できる人」の話し方』 )
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( 福井敏雄 )
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