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[ 名言 ]
いま逆説というものがどうかすると失われつつというか、見落とされつつあるんじゃないか。

[ 出典 ]
長田弘[おさだ・ひろし]
(詩人、1939〜2015)
日本記者クラブ囲む会「詩人の目に映る復興、風景、故郷」(2014年2月19日)より

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〈原文全文〉
自分で考える場合でも、一番小さいときから嫌ってきたのは「二者択一」という考え方でした。
ですから、物事をどっちかを選ぶ、いいか悪いかを選ぶというのではなくて、いいことの中にも悪いことがあり、悪いことの中にもいいことがある、そういう中であんばいを測りながら動いていく言葉があって、ちょうど料理などで言うと、いま言った「あんばい(塩梅、按配)」という言葉が非常に大きな意味を持っているんですね。
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いま、例えば政治を語る言葉、経済を語る言葉、あるいはその他の言葉の中で一番見落とされているのは、「いいあんばいに生きる」というところがないんじゃないでしょうか。
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「あんばい」は正確に計測は不可能なんですけれども、確かにそれで「ここらだ」と感じる一点がある。
はっきりしないけれども、はっきりわかっている感覚というものがある、そういうものがわたしたちを生かしているということを考えるべきではないか、ということを考えるんですね。
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言葉で全部言い切って、強気に言ってしまうと、それが非常に強気な表現になるというふうに考えがちですが、強い言葉を語るときは、大体もろいんです。
もろい言葉を語るのは、大体強いんです。
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わたしも病気をしたのでわかりますけれども、「ああ、おれはもうだめかもしれない」というような言葉を言うときには、大概の人は、これでくたばってたまるか、と思っているときにそう言う。
自分が絶対的にいいときには、「もうだめかもしれない」と言いたくなる。
人間というのは、そういう逆説を持っているところが圧倒的に人間の存在を形づくっているもので、
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いま逆説というものがどうかすると失われつつというか、見落とされつつあるんじゃないかなという気がどこかでしています。
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