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とかく招かれざる客というものは、その訪問先の主人の憎悪感に気附く事はなはだ疎(うと)いものである。
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948) 『お伽草子』 「カチカチ山」 《 憎しみ 》
〈全文〉
とかく招かれざる客というものは、その訪問先の主人の、こんな憎悪感に気附く事はなはだ疎(うと)いものである。 __ Link __ これは実に不思議な心理だ。 読者諸君も気をつけるがよい。 あそこの家へ行くのは、どうも大儀だ、窮屈だ、と思いながら渋々出かけて行く時には、案外その家で君たちの来訪をしんから喜んでいるものである。 __ Link __ それに反して、ああ、あの家はなんて気持のよい家だろう、ほとんどわが家同然だ、いや、わが家以上に居心地がよい、我輩の唯一の憩(いこ)いの巣だ、なんともあの家へ行くのは楽しみだ、などといい気分で出かける家に於(お)いては、諸君は、まずたいてい迷惑がられ、きたながられ、恐怖せられ、襖(ふすま)の陰に箒など立てられているものである。 __ Link __ 他人の家に、憩いの巣を期待するのが、そもそも馬鹿者の証拠なのかも知れないが、とかくこの訪問という事に於いては、吾人(ごじん)は驚くべき思い違いをしているものである。 __ Link __ 格別の用事でも無い限り、どんな親しい身内の家にでも、矢鱈(やたら)に訪問などすべきものでは無いかも知れない。 __ Link __
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