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もう自分には、ひとに可愛がられる資格が無いという、はっきりした自覚を持っていながらも、ひとは、生きて行かなければならぬものであります。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『ろまん燈籠』

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愛・人間愛
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〈全文〉
自分が、まだ、ひとに可愛がられる資格があると自惚れることの出来る間は、生き甲斐もあり、この世も楽しい。
それは当り前の事であります。

けれども、もう自分には、ひとに可愛がられる資格が無いという、はっきりした自覚を持っていながらも、ひとは、生きて行かなければならぬものであります。
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ひとに「愛される資格」が無くっても、ひとを「愛する資格」は、永遠に残されている筈であります。
ひとの真の謙虚とは、その、愛するよろこびを知ることだと思います。
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愛されるよろこびだけを求めているのは、それこそ野蛮な、無智な仕業(しわざ)だと思います。
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