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矢張(やっぱり)犬に違いないポチが、
私に対(むか)うと……犬でなくなる。 それとも私が人間でなくなるのか? ……何方(どっち)だか其(それ)は分らんが、 兎に角(とにかく)互(たがい)の熱情熱愛に、 人畜(にんちく)の差別を撥無(はつむ)して、 渾然(こんぜん)として一如(いちにょ)となる。 二葉亭四迷[ふたばてい・しめい]
(明治の小説家、1864〜1909) 「平凡」 『平凡・私は懐疑派だ』に収載
〈全文〉
犬好(いぬずき)は犬が知る。 __ Link __ 私の此(この)心はポチにも自然と感通していたらしい。 其(その)証拠には 犬嫌いの父が呼んでも、 ほんの一寸(ちょっと)お愛想(あいそ)に尻尾を掉(ふ)るばかりで、 振向きもせんで行って了(しま)う事がある。 母が呼ぶと、 不断食事の世話になる人だから、 又何か貰えるかと思って眼を輝かして飛んで来る、而(そう)して母の手中に其(それ)らしい物があれば、 兎のように跳ねて喜ぶ。 が、しかし、唯(ただ)其丈(それだけ)の事で、 其(その)時のポチは矢張(やっぱり)犬に違いない。 その矢張(やっぱり)犬に違いないポチが、 私に対(むか)うと……犬でなくなる。 それとも私が人間でなくなるのか? ……何方(どっち)だか其(それ)は分らんが、 兎に角(とにかく)互(たがい)の熱情熱愛に、 人畜(にんちく)の差別を撥無(はつむ)して、 渾然(こんぜん)として一如(いちにょ)となる。 __ Link __ 一如(いちにょ)となる。 だから、今でも時々私は犬と一緒になって 此様(こん)な事を思う、 ああ、儘(まま)になるなら 人間の面(つら)の見えぬ処(ところ)へ行って、 飯を食って生きてたいと。
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( 萩原朔太郎 )
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( 作者不詳 )
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