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[ 名言 ]
傑作意識を捨てなければならぬ。
傑作意識というものは、かならず昔のお手本の幻影に迷わされているものである。
だからいつまで経っても、古いのである。
まるで、それこそ、筋書どおりじゃないか。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『芸術ぎらい』

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〈全文〉
傑作意識を捨てなければならぬ。
傑作意識というものは、かならず昔のお手本の幻影に迷わされているものである。
だからいつまで経っても、古いのである。
まるで、それこそ、筋書どおりじゃないか。
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あまりに、ものほしげで、閉口した。

「芸術的」陶酔(とうすい)をやめなければならぬ。
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(映画「無法松の一生」は)始めから終りまで「優秀場面」の連続で、そうして全体が、ぐんなりしている。
「重慶から来た男」のほうは、これとは、まるで反対であった。
およそ「芸術的」でない。
優秀場面なんて一つもない。
ひどく皆うろたえて走り廻っている。
けれども私には、これが非常に面白かった。
決して「傑作」ではない。
傑作だの何だのそんな事、まるで忘れて走り廻っている。
日本の映画は、進歩したと私はそれを見て思った。
こんな映画だったら、半日をつぶしても見に行きたいと思った。

昔の傑作をお手本にして作った映画ではないのである。
表現したい現実をムキになって追いかけているのである。
そのムキなところが、新鮮なのである。
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書生劇みたいな粗雑なところもある。
学芸会みたいな稚拙なところもある。
けれども、なんだか、ムキである。
あの映画には、いままでの日本の映画に無かった清潔な新しさがあった。

いやらしい「芸術的」な装飾をつい失念したから、かえって成功しちゃったのだ。
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重ねて言う。
映画は、「芸術」であってはならぬ。
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私はまじめに言っているのである。


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