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俳句を作る時の心を、私はいつも不思議に思う。
それは「句を作る」のではなくして、遠い祖先の霊魂がよびかけてくるような気がするからである。 私の心の内側にかくれている私自身も知らない今までねむっていたものが、ある日、俳句のよびかけに、はっと目を覚まして、私の中から出てゆくのだ。 桂信子[かつら・のぶこ]
(俳人、1914〜2004) 宇多喜代子編『桂信子文集』 五章:散文集「草花集より」
〈全文〉
俳句を作る時の心を、私はいつも不思議に思う。 それは「句を作る」のではなくして、遠い祖先の霊魂がよびかけてくるような気がするからである。 私の心の内側にかくれている私自身も知らない今までねむっていたものが、ある日、俳句のよびかけに、はっと目を覚まして、私の中から出てゆくのだ。 __ Link __ 今、私の頭上で、しきりに鳴いている蝉も、何年も地中にひそんで、地上に生を得るのは僅かの日数でしかない。 俳句もまた、おなじようなものだ。 思えば、先祖の遠い昔から、私にうけつがれたものが、何かの機会に、火をふいて出てくるのだ。 __ Link __ それ故に別の言葉で言えば、俳句はまことに贅沢きわまるものだと言えるだろう。 氷山のように、俳句は、海上に出ている部分より、海中に沈んでいる部分が、何倍も大きいのだ。 何年もつちかったものが、十七音というわずかな型にこめられて読むひとの心を打つ。 ひとびとは、その背後にかくされたものに思いをひそませその心を感じとるのだ。 __ Link __ われわれが、俳句に敬虔な気持をいだくのは、十七音を媒体として、冥府の世界をのぞくような畏怖が、理屈でなく感じられてしまうからだ。 __ Link __
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