「官僚が悪い」という言葉…(中略)民衆だって、ずるくて汚くて慾が深くて、裏切って、ろくでも無いのが多いのだから、謂(い)わばアイコとでも申すべきで(後略)
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948) 『家庭の幸福』 【 太宰治の名言 】
〈全文〉
「官僚が悪い」という言葉は、所謂(いわゆる)「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どんな具合いに悪いのか、どうも、色あざやかには実感せられなかったのである。 問題外、関心無し、そんな気持に近かった。 つまり、役人は威張る、それだけの事なのではなかろうかとさえ思っていた。 しかし、民衆だって、ずるくて汚くて慾が深くて、裏切って、ろくでも無いのが多いのだから、謂(い)わばアイコとでも申すべきで、むしろ役人のほうは、その大半、幼にして学を好み、長ずるに及んで立志出郷、もっぱら六法全書の糞(くそ)暗記に努め、質素倹約、友人にケチと言われても馬耳東風、祖先を敬するの念厚く、亡父の命日にはお墓の掃除などして、大学の卒業証書は金色の額縁にいれて母の寝間の壁に飾り、まことにこれ父母に孝、兄弟には友ならず、朋友(ほうゆう)は相信ぜず、お役所に勤めても、ただもうわが身分の大過無きを期し、ひとを憎まず愛さず、にこりともせず、ひたすら公平、紳士の亀鑑、立派、立派、すこしは威張ったって、かまわない、と私は世の所謂お役人に同情さえしていたのである。
1.
( ショーペンハウアー )
2.
( 村上春樹 )
3.
( )
4.
( 長田弘 )
5.
( 河井寛次郎 )
6.
( 吉田武 )
7.
( ギー・ドゥボール )
8.
( 『聖書』 )
9.
( 作者不詳 )
10.
( アドルフ・ヴィルブラント )
11.
( 日本の格言 )
12.
( 阿南惟幾 )
13.
( 永野健 )
14.
( 八木重吉 )
15.
( 太宰治 )
16.
( ワイセ )
17.
( 青田強 )
18.
( 瀬戸薫 )
19.
( ジミー・ジョンソン )
20.
( 志茂田景樹 )
|