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好意をもった相手や、
この面白さをわかってくれるんじゃないかと思う相手に、 自分の好きな本を贈りたくなることがある。 自己満足に近いというか、 微妙な行為だ。 でも、ときどきやってみたくなる。 穂村弘[ほむら・ひろし]
(歌人、詩人、批評家、エッセイスト、1962〜) 随筆集『整形前夜』
〈全文〉
好意をもった相手や、 この面白さをわかってくれるんじゃないかと思う相手に、 自分の好きな本を贈りたくなることがある。 自己満足に近いというか、 微妙な行為だ。 でも、ときどきやってみたくなる。 __ Link __ 本当にやりたいのはちょっと違うパターン。 贈る相手も決まらないうちから、 予(あらかじ)め特定の本を揃えておくのである。 既に絶版とか品薄になっている作品のなかに、 (古本屋などで)安い値段でみつけたら何冊でも買うと決めているものが 何タイトルかある。 これという相手と知り合ったとき、 そのなかから選んで贈るのだ。 __ Link __ 普通に本屋で買って渡すのとは こちらの思い入れも違う。 単にお薦めの本を読んで欲しいという以上の気持ち、 すなわち、それを贈ることが 相手の運命への特別な関与になることを 密かに夢みてしまうのだ。 __ Link __ 例えば、 この本に出会うべきひとなのに 時間がズレたせいで擦れ違っている、 と思ったときに贈りたくなる。 「この本に出会うべきひと」などというのは 全く勝手な思い込みに過ぎないのだが、 自分のなかでは 運命の時間的な誤差を修正する タイムパトロールにでもなったつもりだ。 __ Link __ そんな勝手な思いを相手は知らないから、 本を渡した瞬間に 「あれ? 古本だ」と怪訝そうな顔をされることもある。 その表情をみると、「今は迷惑かもしれないけど、 いつかわかってくれる筈。 この本を読むことで きっとあなたの運命が変わるから」などと、 不気味な気持ちはますます強くなるのだった。
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( ケネス・アロー )
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