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人間は決して人間に服従しない、奴隷でさえ奴隷らしい卑屈なシッペがえしをするものだ、
だから、人間にはその場の一本勝負にたよる他、生き伸びる工夫がつかぬのだ。 太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948) 『人間失格』
〈全文〉
世間。 どうやら自分にも、それがぼんやりわかりかけて来たような気がしていました。 個人と個人の争いで、しかも、その場の争いで、しかも、その場で勝てばいいのだ、 __ Link __ 人間は決して人間に服従しない、奴隷でさえ奴隷らしい卑屈なシッペがえしをするものだ、 だから、人間にはその場の一本勝負にたよる他、生き伸びる工夫がつかぬのだ、 __ Link __ と大義名分らしいものを称となえていながら、努力の目標は必ず個人、個人を乗り越えてまた個人、世間の難解は、個人の難解、大洋(オーシャン)は世間でなくて、個人なのだ、と世の中という大海の幻影におびえる事から、多少解放せられて、以前ほど、あれこれと際限の無い心遣いする事なく、謂わば差し当っての必要に応じて、いくぶん図々しく振舞う事を覚えて来たのです。
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