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理想主義者は、悲しい哉(かな)、現世に於(お)いてその言動、やや不審、滑稽の感をさえ隣人たちに与えている場合が、多いようである。
謂(い)わば、かのドン・キホオテである。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『デカダン抗議』

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〈全文〉
理想主義者は、悲しい哉(かな)、現世に於(お)いてその言動、やや不審、滑稽の感をさえ隣人たちに与えている場合が、多いようである。
謂(い)わば、かのドン・キホオテである。
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あの人は、いまでは、全然、馬鹿の代名詞である。
けれども彼が果して馬鹿であるか、どうかは、それに就(つ)いては、理想主義者のみぞよく知るところである。

高邁(こうまい)の理想のために、おのれの財も、おのれの地位も、塵芥(ちりあくた)の如く投げ打って、自ら駒を陣頭にすすめた経験の無い人には、ドン・キホオテの血を吐くほどの悲哀が絶対にわからない。
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