自然という汲(く)めどつきせぬ一冊の本を読むには、
まず身をかがめなければいけない。 長田弘[おさだ・ひろし]
(詩人、1939〜2015) 詩集『世界は一冊の本』 詩「ファーブルさん 三」 【 長田弘の名言 】
〈全文〉
どんな王宮だって、とファーブルさんはいった。 優美さにおいて精妙さにおいて、一匹の カタツムリの殻に、建築として到底およばない。 この世のほんとうの巨匠は、人間じゃない。 __ Link __ この地球の上で、とファーブルさんはいった。 人間はまだ、しわくちゃの下書きにすぎない。 われわれ貧しい人間にさずかったもののうちで、 いちばん人間らしいものとは、何だろうか。 「なぜ」という問い、ファーブルさんはいった。 ものの不思議をたずね、辛抱づよく考えぬくこと。 探求は、たくましい頭を必要とする労働だ。 耳で考え、目で考え、足で考え、手で考えるのだ。 __ Link __ 理解するとは、とファーブルさんはいった。 はげしい共感によって相手にむすびつくこと。 __ Link __ 自然という汲(く)めどつきせぬ一冊の本を読むには、 まず身をかがめなければいけない。 __ Link __
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