学校は、もともと落第させないように出来ているものです。
それを落第するのは、必ず学生のほうから、無理に好んで志願する結果なのです。 感傷だね。 教師に対する反抗だね。 見栄(みえ)だね。 くだらない正義感だね。 太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948) 『新ハムレット』 侍従長ポローニャが息子レヤチーズに言ったセリフ 【 太宰治の名言 】
〈全文〉
学校は、もともと落第させないように出来ているものです。 それを落第するのは、必ず学生のほうから、無理に好んで志願する結果なのです。 感傷だね。 教師に対する反抗だね。 見栄(みえ)だね。 くだらない正義感だね。 かえって落第を名誉のように思って両親を泣かせている学生もあるが、あれは、としとって出世しかけた時に後悔します。 学生の頃(ころ)は、カンニングは最大の不名誉、落第こそは英雄の仕業と信じているものだが、実社会に出ると、それは逆だった事に気がつきます。 カンニングは不名誉に非(あら)ず、落第こそは敗北の基と心掛ける事。 なあに、学校を出て、後でその頃の学友と思い出話をしてごらん。 たいていカンニングしているものだよ。 そうしてそれをお互いに告白しても、肩を叩(たた)き合って大笑いして、それっきりです。 後々の傷にはなりません。 けれども落第は、ちがいますよ。 それを告白しても、人はそんなに無邪気に笑って聞きのがしては、くれません。 お前は、どこやら、軽蔑(けいべつ)されてしまいます。 出世のさまたげ、卑屈の基。
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