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紙一重のわずかな進歩だって、どうして、どうして。
自分では絶えず工夫して進んでいるつもりでも、はたからはまず、現状維持くらいにしか見えないものです。

[ 出典 ]
太宰治[だざい・おさむ]
(明治〜昭和の作家、1909〜1948)
『炎天汗談』(「芸術新聞」昭和17年8月より)

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〈全文〉
先日、新橋演舞場へ文楽を見に行きました。
文楽は学生時代にいちど見たきりで、ほとんど十年振りだったものですから、れいの栄三、文五郎たちが、その十年間に於(お)いて、さらに驚嘆すべき程の円熟を芸の上に加えたであろうと大いに期待して出かけたわけですが、拝見するに少しも違っていない。
十年前と、そっくりそのまま同じでした。
私の期待は、はずれたわけですが、けれども、私は考え直しました。
この変わっていないという一事こそ、真に驚嘆、敬服に価すべきものではないか。
進歩していない、というと悪く聞こえますが、退歩していないと言い直したらどうでしょう。
退歩しないという事は、之(これ)はよほどの事なのです。
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修業という事は、天才に到る方法ではなくて、若い頃の天稟(てんぴん)のものを、いつまでも持ち堪える為にこそ、必要なのです。
退歩しないというのは、これはよほどの努力です。
ある程度の高さを、いつまでも変わらずに持ちつづけている芸術家はよほどの奴です。
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たいていの人は年齢と共に退歩する。
としをとると自然に芸術が立派になって来る、なんてのは嘘ですね。
人一倍の修業をしなけれあ、どんな天才だって落ちてしまいます。
いちど落ちたら、それっきりです。
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変わらないという事、その事だけでも、並たいていのものじゃないんだ。
いわんや、芸の上の進歩とか、大飛躍とかいうものは、ほとんど製作者自身には考えられぬくらいのおそろしいもので、それこそ天意を待つより他に仕方のないものだ。
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紙一重のわずかな進歩だって、どうして、どうして。
自分では絶えず工夫して進んでいるつもりでも、はたからはまず、現状維持くらいにしか見えないものです。
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製作の経験も何もない野次馬たちが、どうもあの作家には飛躍が無い、十年一日の如しだね、なんて生意気な事を言っていますが、その十年一日が、どれだけの修業に依って持ち堪えられているものかまるでご存じがないのです。
権威ある批評をしようと思ったら、まず、ご自分でも或る程度まで製作の苦労をなめてみる事ですね。
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